どちらかというと安っぽいドラマに出てくるスケベおやじを連想させた。バスローブというのは典型的な日本人の体形には合わないようだ。


呼び鈴が部屋の中に響いた。
その大きな響きに僕はビクっとなる。
どうやら彼女が帰ってきたようだ。
僕はそそくさと入口のドアを開ける。

「ごめんねー、遅くなって。なかなか洋服のお店が見つかんなくてさー」

彼女は息を切らしながそう言ってこちらを見た。
すると、彼女は僕のバスローブ姿を見たとたん、砕け散ったように笑い出した。

「何だよ、急に!」
「いやー、どこのスケベ親父かと思ったよ。部屋、間違えちゃったかなーって」
「ふん。確かにカッコよくはないのは分かってるけど、そこまで笑わなくてもいいんじゃない」
「ごめん、ごめん。あ、スエットでよかったかな? フリーサイズなんだけど大丈夫だよね。ちょっと着てみて。あとタコ焼きが屋台で売ってたから買ってきたよ」

僕は買ってきてもらったスエットを受け取った。
風呂場で着替えると、彼女の買ってきてくれたスエットは思いのほかピッタリだった。

「うん、なかなか似合うよ!」
「そう?」

「あのバスローブを着続けられたら私、笑い過ぎで呼吸困難で死んじゃうとこだよ」
僕はムスっとしながら彼女の買ってきてくれたタコ焼きを一口で頬張った。

「熱っ!」
「中のほうはまだ熱いんだから頬張っちゃ駄目だよ。中を割って少し冷やしてから食べるんだよ。ばっかじゃない?」

彼女は子供のようにはしゃぎながら笑った。
タコ焼きは親しいカップルの食べ物って言っていた理由《わけ》が分かるような気がした。

親しいカップル?
その言葉に僕は反応した。

僕達は親しいと言っていいのだろうか? 
少なくとも彼女にはフラれてるから付き合っているわけではない。
では僕たちの関係って何なんだろうか?

「なにボーっとしてんの?」

彼女の呼び掛けに我に還る。

「あ、ごめん!」
「エッチなこと考えてたんでしょ」
「考えてないよ!」

 僕は真っ赤になりながら否定する。

「冗談だよ。でもムキになるとこ見ると怪しいな」

しつこくからかってくるので僕はちょっとムっとした顔で彼女を睨んだ。

「そういえば、明日は葵さんの誕生日だったよね。おめでとう」
「へへ、ありがとう。ところでハルくんの誕生日っていつ?」
「僕? 四月五日だよ」