マジメなハジメと蒼いスズメの恋愛リハーサル

彼女は相変わらずの眩しい笑顔で映っていた。

驚いたのは、彼女の横にいる見覚えのない間の抜けた笑顔だ。
それは紛れもない僕だった。

とても不思議だった。
こんなに自然に笑えている自分が自分ではないような感じがした。

「きゃー、すっごくいい感じに撮れたね」

お礼を言ったあと、その大学生とは反対の方向に歩き出した。

「仲良くねー、かわいいカップル君たち!」

大学生は大きく手を振っていた。
彼女もお返しに大きく両手を振った。

そうか。僕たちはまわりから見たらカップルに見えるんだ。

ちょっと寂しかった。
本当に付き合っているわけじゃないから。


島からの帰りの下り坂道をブラつきながら歩く。
雑貨が並ぶ小さな土産店に立ち寄った。

そこには海にちなんだ土産品が所狭しと並んでいた。

僕はあるストラップに目が行った。
小さなペンギンのストラップだ。

その姿はどこかで見覚えがあるものだった。
そうだ。ハルノートに書かれていたペンギンにそっくりだ。

「きゃー可愛いね、私、ペンギン好きなんだ」

彼女は僕の持っていたそのストラップを見ながら叫んだ。

「葵さん、ペンギン好きなの」
「だって可愛いじゃん!」

彼女は嬉しそうに同じストラップを手に取った。

「はい!」

彼女は笑いながら手を伸ばし、そのストラップを僕に手渡した。

「え? 何?」
「買ってくれる? 誕生日プレゼントに」

「え? 葵さん、誕生日なの?」
「うん。明日ね」

僕は素直にびっくりした。

「あの・・・それは、おめでとう・・・・」
「ありがと」

「でも、こんなものでいいの?」
「これがいいの」

彼女はそう言いながら、今度は僕が先に持っていたストラップを取り上げた。

「で、こっちのは私が買ってあげるね、君に」

そう言いながらクスっと笑った。

「え? それ、同じものでしょ? 僕、誕生日でもないし・・・・・」
「同じじゃないよ。君のやつは記念ってことで」

「記念? 何の?」
「もう、何でもいいじゃん!」

そう言うと彼女はそれを持ってレジに並んだ。
僕も別のレジに並んで、同じストラップを別々に買った。

僕は自分の買った包みを彼女に渡した。

「あの・・・誕生日おめでとう」

「フフ、ありがとう。大切にするね。じゃあこれは私から君に。大切にしてね」