「君、DNAが好きだね? もしかしてベイスターズファン?」
「何? それ?」

僕は意味が分からずポカンとする。

「ごめん。今の忘れて」

なぜか彼女は恥ずかしそうに顔を背けた。

長い橋を渡ると、島の奥に向かって路地が続いている。
そこには多くのお店が連なっていた。

僕たちはゆったりとした坂道を登っていく。

土産店や海の幸の食堂などが細い坂道沿いに並んでいた。

「なんかお腹すいたな。タコ焼き食べない?」
「何でタコ焼きなの?」
「知らないの? タコ焼きって親しいカップルが食べるものなんだよ」
「聞いたことないけど・・・」

「タコ焼き、嫌い?」
「いや、好きだけど・・・」
「そう。よかった」

何がよかったのだろうか?

しばらくなだらかな坂道を登っていくと、店の前に並ぶ人の行列を見つけた。

「え? 何あれ?」

店から出てくる人はみんなとても大きい下敷きのようなせんべいを持っている。
ここの名物なのだろうか。

「おいしそう。あれ食べたい!」
「え? これに並ぶの?」

ざっと見ても二十人くらいはいるだろうか。
僕はちょっと引き気味になる。

「これだけ並んでるんだからきっと美味しいんだよ!」

僕はちょっと面倒くさい顔をしながら一緒に行列の最後尾に並んだ。
買えたのは二十分ほど経った時だった。

やっとのことで買った下敷きのようなせんべいをかじりながら、僕たちはさらに島を上へと登っていく。

「うーん。大きさがデカいだけで味は普通だね」

彼女は不服そうな顔でせんべいをかじり続ける。

「そう?」
「やっぱ、タコ焼のほうがよかったかな?」
「ううん。すっごく美味しいよ、コレ」

せんべいにバリバリとかじりつく僕を見て彼女はクスッと笑った。

徐々に標高が上がっていくにつれ、だんだんと見晴しが良くなってくる。あたりは春の花が咲き乱れていた。

「うわあ、綺麗!」

彼女は子供のようにはしゃぎながら駆け出した。

再び歩き出して間もなく島の頂上に着く。
そこには大きな展望台があり、正面には一面に青い海が広がっていた。

頂上から見える空には雲ひとつ無く、真っ青に染まっていた。

「うーん絶景だね! 来てよかったあ!」

彼女が叫んだ。

「うん。すごい気持ちいいね!」

素直に僕はそう答えた。
春の潮風が本当に気持ちよかった。