「どうして……そんなこと言うの」
「あれから菜美ちゃんに一回も会ってないでしょ」
確かにデートした日以来、一度もちゃんと会っていない。
それどころか話すらしてなかった。
「知ってた?」
「知ってるよ。どうして会わないの? 菜美ちゃんのこと好きなんでしょ」
「……」
「もっとちゃんとしなきゃダメだよ」
その言葉はずっと抑えてきた僕の心に亀裂を入れた。
「ちゃんとするって、どういうこと?」
僕の口調が強めに変わる。
「自分の気持ちに正直になればいいんだよ」
その言葉は抑え込まれていた僕の気持ちを限界まで膨らませた。
「あのさ、前から聞きたかったんだけど、葵さんはどうして僕のことを応援してくれるの?」
僕の言葉に彼女がグッとたじろいだ。
「どうしたの? 急に」
「急にじゃないよ。僕、ずっと考えたんだ。でもどうしても分からない」
「だって君は菜美ちゃんのことを好きなんでしょ? 君と菜美ちゃんならお似合いだと思うから……二人がうまくいって欲しいって思ってるからだよ」
「僕が麻生さんのこと好きだって思ってるから応援してくれてるの?」
「もちろん、そうに決まってるじゃない」
彼女は不思議そうな顔で僕をじっと見つめた。
その罪の欠片も感じられない表情に抑え込まれていた感情が限界を超えた。
「じゃあ、もういいよ」
「どういう意味?」
「もう僕の応援してくれなくていいよ」
「どうして?」
「僕は……」
「なに?」
「僕が好きなのは葵さんだから」
言ってしまったあとに僕自身がびっくりしていた。
彼女は戸惑った様子で僕を見ていた。
――言っちゃった。
僕は彼女から思わず目を逸らした。
彼女が次に何を言うのかが怖くて今すぐ逃げ出したい気分になった。
「あーっ、なんだあ!」
彼女が笑いながら叫んだ。
――え、何?
「そっかあ、これ告白のリハーサルだね。びっくりしたなあ。うん、いい感じだよ。ドキッとしちゃった」
「違うよ!」
僕は思わず叫んだ。
「分かったんだ。僕が好きなのは葵さんだったっていうことが」
「え?」
彼女からスッと笑顔が消える。
今、分かった。
初めて彼女とデートの練習をした時、なぜ僕は彼女に言いようのない怒りを覚えてしまったのか。
それは彼女のことを好きだったからなんだ。
「あれから菜美ちゃんに一回も会ってないでしょ」
確かにデートした日以来、一度もちゃんと会っていない。
それどころか話すらしてなかった。
「知ってた?」
「知ってるよ。どうして会わないの? 菜美ちゃんのこと好きなんでしょ」
「……」
「もっとちゃんとしなきゃダメだよ」
その言葉はずっと抑えてきた僕の心に亀裂を入れた。
「ちゃんとするって、どういうこと?」
僕の口調が強めに変わる。
「自分の気持ちに正直になればいいんだよ」
その言葉は抑え込まれていた僕の気持ちを限界まで膨らませた。
「あのさ、前から聞きたかったんだけど、葵さんはどうして僕のことを応援してくれるの?」
僕の言葉に彼女がグッとたじろいだ。
「どうしたの? 急に」
「急にじゃないよ。僕、ずっと考えたんだ。でもどうしても分からない」
「だって君は菜美ちゃんのことを好きなんでしょ? 君と菜美ちゃんならお似合いだと思うから……二人がうまくいって欲しいって思ってるからだよ」
「僕が麻生さんのこと好きだって思ってるから応援してくれてるの?」
「もちろん、そうに決まってるじゃない」
彼女は不思議そうな顔で僕をじっと見つめた。
その罪の欠片も感じられない表情に抑え込まれていた感情が限界を超えた。
「じゃあ、もういいよ」
「どういう意味?」
「もう僕の応援してくれなくていいよ」
「どうして?」
「僕は……」
「なに?」
「僕が好きなのは葵さんだから」
言ってしまったあとに僕自身がびっくりしていた。
彼女は戸惑った様子で僕を見ていた。
――言っちゃった。
僕は彼女から思わず目を逸らした。
彼女が次に何を言うのかが怖くて今すぐ逃げ出したい気分になった。
「あーっ、なんだあ!」
彼女が笑いながら叫んだ。
――え、何?
「そっかあ、これ告白のリハーサルだね。びっくりしたなあ。うん、いい感じだよ。ドキッとしちゃった」
「違うよ!」
僕は思わず叫んだ。
「分かったんだ。僕が好きなのは葵さんだったっていうことが」
「え?」
彼女からスッと笑顔が消える。
今、分かった。
初めて彼女とデートの練習をした時、なぜ僕は彼女に言いようのない怒りを覚えてしまったのか。
それは彼女のことを好きだったからなんだ。