週が明けた月曜日、今週はいよいよ高校二年最後の週になる。

この日は朝から雨が降り続く嫌な天気だった。
雨は予報通り放課後の時間になっても降り続いていた。

今日は部活の日ではあったが、雨の日はコートが使えないため部室でのミーティングとなった。
その日は簡単な打ち合わせのあと三十分程度で解散となった。

僕はラッキーと思いながらカバンを取りに自分の教室へと向かった。
校内にいた生徒はほとんど帰宅してしまったようで、どの教室も人は疎らだ。

A組の教室の前を通った時だ。
後側の扉が開いており、一瞬だが教室の中が目に入った。

そこに女子生徒がひとり奥の席でぽつりと座っているのが見えた。

後ろ姿ではあったが、それが葵さんであることはすぐに分かった。

声を掛けようかどうか迷う。
そのまま通り過ぎようと思ったが僕の足は止まっていた。

扉から教室を覗き込む。
どうやら他の生徒はみんな帰っていて、彼女以外誰もいないようだ。

彼女は俯いたままじっとしていた。

何をしてるんだろう?

僕はそおっと教室の中に入る。
僕の姿が見えてないのか、彼女は下を俯いたまま気がついていない。

声を掛けようと思った瞬間、俯いてる彼女の寂しそうな顔が目に入り、僕はそのまま動けなくなった。

何も言えずに固まったまましばらくの時が過ぎる。

僕は声を掛けるタイミングを完全に失っていた。
すると彼女はクッと顔を見上げたと思うと、そのまま立ち上がり、僕のほうに振り向いた。

「わっ!」
「わっ!」

彼女はやたらびっくりした顔で叫んだ。
そのやたらびっくりした彼女の反応に僕もやたらびっくりして叫んだ。

「あっ、ごめん。びっくりさせちゃった?」
「マジメくんじゃん。びっくりした。脅かさないでよ!」
「ごめんね、驚かせるつもりじゃ……いや驚かすつもりだったけど……」

僕はシドロモドロになりながら自分でも訳が分からない言い訳をした。

「今日は部活が雨で休みになったんで帰ろうと思ったんだけど、葵さんが見えたから……」
「ふーん」

しばらく間が空き、ちょっと気まずい雰囲気が漂う。


「あの……何かあったの?」

僕は探るような言い方で訊いた。

「え? どうして?」
「さっき、何かとっても悲しそうな顔してたから」

マズい。あからさまに言い過ぎだろうか?