でも、最後に彼女に言われた言葉が僕の心の中につかえていた。

『菜美ちゃんのこと、大切にしなよ』

やっぱりこの言葉に心が痛む。

切ない気持ちが心の底に渦巻いているのが分かる。
この気持ちが何なのか、その理由を自分自身に問いかけてみる。

もしかして、僕は麻生さんのことが好きなのではないのかもしれない。

そもそも僕が麻生さんに声を掛けたのはペン子さんが麻生さんではないか、と考えたからだ。
それで友達になろうと思ったんだ。

最初は勇気が足りなくて失敗しちゃったけど、彼女が助け舟を出してくれたから声を掛けられたんだ。

　――あれ？

もうひとつ疑問が浮かび上がる。
そういえば、どうして彼女は僕の応援をしてくれてるのだろうか？

別がクラスである彼女とは元々は面識がない。だから僕が応援される理由が見当たらない。　

そして、さらにもうひとつの疑問がある。

どうしてあのタイミングで僕に声を掛けることができたのか？　
まるで僕が麻生さんに声を掛けるのを知っていたかのようだ。
でも、そんなことあるはずがない。

そのことは誰にも話してはいないし、話す相手もいない。

　――分からない。

どちらもすぐに答えを見つけるのは難しそうだ。

取り敢えず今日は寝ることにしよう。