「いいよ、謝んなくて。でも確かにこっちが本当に好きじゃないってことが伝わっちゃったからフラれたのかもしれない。女の子と男の子の関係って難しいね・・・・・」

そのまま彼女は黙り込んだ。
余計なことを言ってしまったと後悔した。

「あのさ、冴木くんは・・・・・今のままでいいと思うよ」
「え? どういう意味?」
「君らしい君でいいってことだよ」

そんなこと言われたのは初めてだったので僕は戸惑った。

「僕らしい僕って・・・・・どういうことなのかな?」
「分かんないの?」

僕は黙って頷いた。

「うーん・・・・・」
彼女は困惑した顔で首を捻った。

「実はね、君に積極的にならなきゃダメだとか偉そうなこと言っちゃったけど、私にそんなこと言う資格なんて無いんだね」

彼女らしくない遠慮がちな態度に僕は戸惑った。

「冴木くんさ、もしかして他人(ひと)との間に壁とか感じてない? 特に自分とタイプの違う人に」

その通りだ。
確かに僕は積極的なタイプの人たちとの間に壁を感じていた。
これがコンプレックスというものなんだろう。

「私ね、その気持ちすごく分かるよ。なんかこう見えない高い壁があるって感覚だよね」

意外なことを言う。
彼女は他人(ひと)との間に壁を感じるようなコンプレックスとは無縁だと思っていた。

「でもね、他人との間に感じる壁って、大体その人自身が作ったものなんだって。つまりその壁は自分自身で壊せるってこと」

その言葉が僕の心にグサっと刺さった。
確かにその通りかもしれない。
でも、僕にはその壁を壊す度胸は無さそうだ。

「あのさ、もしかして、私にもその壁って感じてる?」

心を見透かされた感じがした。

「どうしてそんなこと訊くの?」
「だって君、さっきから私の目を全然見てくれてないでしょ?」

またグサリと心に突き刺さった。
そう、僕は子供の時から人と話す時、その人の顔や目を見るのが苦手だった。
これは親からも先生からもずっと言われていた。
人と話す時はその人の目を見ろと。

「ごめんね」

僕はすかさず謝まった。
そりゃ顔を見るのを避けられたら、いい気分はしないだろう。
相手に失礼なことだってことは分かっていた。
でも、僕はできなかった。