「まあ、確かに・・・言われることあるけど・・・・・」
「だよね!」

彼女はまた笑い出した。

「あの・・・・・この前は本当にごめんね。酷いこと言って」

僕は昨日のことをまた謝った。

「だからもういいよ。実は私も帰ってから思ったんだ。私がどうこう言うことじゃないって」
「違うよ。葵さんの言うことは本当だよ。変わらなきゃダメだと思ってる。もっと積極的になりたいって思ってるんだ。ただ、他人(ひと)から言われたくなかったんだと思う。男らしくないよね」

僕は素直に謝ることができた自分に対してホッとしていた。

「じゃあ、もう大丈夫だね。今度は菜美ちゃんとしっかりね」
「うん・・・・・」

何だろう。この気持ちは。
素直になれない変な違和感が心の奥に漂っていた。

「葵さんは・・・・・彼氏いるんだよね?」

どうして僕はそんなこと聞くんだ? 
訊いた自分がびっくりしていた。

「いるように見える?」

自分で訊いておきながらその答えを訊きたくなかった。

「実はちょっと前まではいたけど別れたの」
「え?」
「フラれたんだ。私」
「あ、ごめん」

僕は慌てて謝ったが、ものすごく複雑な気持ちになった。

「ううん、大丈夫だよ。実はフラれはしたけどそんなにショック受けてないんだ。元々向こうから交際申し込んできたんだけど、私もその男の子のこと、あんまり好きじゃなかったのかもしれない」

彼女は本当に何でもないような感じでケロッと答えた。
そんな彼女に少しばかり違和感を持った。

でも、やっぱり彼女は噂通りの遊び人なのか・・・・・。


「葵さんは、好きでもない男子と付き合ってたの?」
「うーん。向こうから付き合ってくれって言われて、特に嫌いな訳じゃなかったから・・・・・」
「それって何かいい加減な気がするな。相手に対しても失礼じゃないの?」

彼女の表情がスッと曇った。

しまった! と心の中で叫ぶ。

ああ・・・・・またやっちゃった。
無神経に思ったことをそのまま言ってしまう僕の悪いクセだ。

「ごめんね。無神経なこと言って。僕、こういうところがダメなんだ。相手の気持ちも考えずに思ったことを言っちゃうんだよ」

彼女は驚いたような顔でしばらく黙っていたが、フッと顔が緩んだ。

「ううん、気にしないでいいよ。でも、そんないい加減な気持ちだったつもりはないんだけどな・・・・・」
「ごめん」