誰にも拾われないように祈りながら僕は体育館へと向かった。
体育の授業が終わると、僕は素早く着替えを済ませ、忘れたハルノートを取りに屋上へと向かった。
ペントハウスの階段を駆け上がり、給水塔の脇に目をやる。
そこで僕は愕然とする。その場所にはあったはずのノートは無い。
確かにここに置いたはずなんだ。
もしかして誰かが持っていってしまった?
僕の頭から引き潮のように血の気がサアっと引く。
あのノートには僕の書きかけの小説がいっぱい書かれている。
下手な字だし内容もまだまだだ。
ても他人に見せられるようなものではなかった。
あんなもの誰かに見られたら恥ずかしいどころではない。
でもハルノートには名前は書いてなかった。
から誰かに拾われたとしても誰のものか分からないだろう。
ならばこのままほおってほおっておくか。
いや、あのノートには僕の今まで書いた小説のネタがいっぱい詰まっている。
あれは僕の宝物なんだ。
失くすわけにはいかない。
そうだ。
もしかしたら拾ってくれた人が忘れ物として届けてくれたのかも?
僕は忘れ物の届け先となる用務室を訪ねることにした。
放課後に用務室に向かう。
でもその足取りは少し重かった。
受付の窓の前で呼びかける。
自分でも情けなくなるような小さな声だ。
すると中からのっそりとおばさんが顔を出した。
そう、僕はこの事務のおばさんが苦手だった。
何を食べればこんなに大きくなるんだろうと思うくらいガタイのいい体格をしている。
このおばさんは生徒の間でアースラと呼ばれていた。
アースラとは童話に出てくる海の魔女の名前だ。
僕はアースラのただ立っているだけで漂う威圧感にいつも圧倒されていた。
「はい、何かしら」
アースラはその声まで威圧的だった。
「あの……すいません。落し物したんですけど……」
「ああ、落し物ね。何を落としたの?」
「あの……」
アースラの威圧的な姿とその声にすっかり萎縮してしまった僕は言葉に詰まる。
「はい?」
「……ト」
懸命に声を絞り出そうとするが、言葉にならない。
「はいいい?」
アースラの声がさらに威圧的になる。
「あのね、君、男の子でしょ! もっとはっきりしなさい!」
体育の授業が終わると、僕は素早く着替えを済ませ、忘れたハルノートを取りに屋上へと向かった。
ペントハウスの階段を駆け上がり、給水塔の脇に目をやる。
そこで僕は愕然とする。その場所にはあったはずのノートは無い。
確かにここに置いたはずなんだ。
もしかして誰かが持っていってしまった?
僕の頭から引き潮のように血の気がサアっと引く。
あのノートには僕の書きかけの小説がいっぱい書かれている。
下手な字だし内容もまだまだだ。
ても他人に見せられるようなものではなかった。
あんなもの誰かに見られたら恥ずかしいどころではない。
でもハルノートには名前は書いてなかった。
から誰かに拾われたとしても誰のものか分からないだろう。
ならばこのままほおってほおっておくか。
いや、あのノートには僕の今まで書いた小説のネタがいっぱい詰まっている。
あれは僕の宝物なんだ。
失くすわけにはいかない。
そうだ。
もしかしたら拾ってくれた人が忘れ物として届けてくれたのかも?
僕は忘れ物の届け先となる用務室を訪ねることにした。
放課後に用務室に向かう。
でもその足取りは少し重かった。
受付の窓の前で呼びかける。
自分でも情けなくなるような小さな声だ。
すると中からのっそりとおばさんが顔を出した。
そう、僕はこの事務のおばさんが苦手だった。
何を食べればこんなに大きくなるんだろうと思うくらいガタイのいい体格をしている。
このおばさんは生徒の間でアースラと呼ばれていた。
アースラとは童話に出てくる海の魔女の名前だ。
僕はアースラのただ立っているだけで漂う威圧感にいつも圧倒されていた。
「はい、何かしら」
アースラはその声まで威圧的だった。
「あの……すいません。落し物したんですけど……」
「ああ、落し物ね。何を落としたの?」
「あの……」
アースラの威圧的な姿とその声にすっかり萎縮してしまった僕は言葉に詰まる。
「はい?」
「……ト」
懸命に声を絞り出そうとするが、言葉にならない。
「はいいい?」
アースラの声がさらに威圧的になる。
「あのね、君、男の子でしょ! もっとはっきりしなさい!」