「ずっと一緒にいたい・・・・・」

 ――え?

涼芽の声。
涼芽の言葉。

いや、そんな筈はない。

僕は思わず遥芽の顔を見た。
遥芽も僕の顔をじっと見つめている。

体中の血が固まったような気がした。

 ――まさか涼芽?

遥芽の口元が悪戯っぽくニッと緩む。

「フフ、これさ、プロポーズの言葉でしょ? 小さい時、ママから聞いたんだ」

遥芽がドヤ顔で笑う。
固まった血が体中にどっと流れ出した。

「びっくりさせないでくれよ!」

スズカの魂が降りてきて遥芽に乗り移ったのではないかと、一瞬でも本気で思ってしまった自分に苦笑する。

「でも、いつ聞いたんだ? それ」

「ママが死んじゃうちょっと前だったから、一年生のころかなあ。海岸の花火大会で言ったんでしょ?」

「そこまで聞いたんだ」
「うん。でもこのセリフ、どっちが言ったの?」
「それは聞いてないのか?」
「ママ、教えてくれなかったんだよね」

「じゃあ、パパも教えられないなあ・・・」
「え? ずるい、教えてよ!」

ふて腐れた顔がまた涼芽にそっくりだ。

「実はさ・・・」
「うん?」
「忘れちゃったよ・・・」

遥芽はハアっと吹き飛ばされそうなくらい大きなため息をついた。

「君はどうしてそんな見え透いた嘘を堂々と言えるんだ?」

生意気なその言い方に僕は思わず噴き出した。
本当に涼芽そっくりだ。


「ねえ、お腹すいたよ。タコ焼き食べたくなっちゃった。帰りに食べて行こうよ」

とても懐かしい感じがした。
そうだ。スズカもタコ焼きが好きだったっけ・・・。

「これもDNAかな?」

思わず口に出た言葉にあっと思う。

「何それ?」

「何でもないよ。そう言えば知ってるか? タコ焼きって親しくなった カップルが一緒に食べるものらしいぞ」

遥芽はくりっとした丸い目を細めながら僕を見た。

「聞いたことないよ。誰が言ったの?」
「ママがそう言ってたんだよ」

遥芽は驚いたような顔をして僕の顔を覗き込む。

「ママ、いつそんなこと言ったの?」

「うーん。確か高校の時だったかな。パパとママがまだ付き合う前の話だけどね」

「もしかして、ママはそう言いながらパパにタコ焼きを買ってきたとか?」
何が面白かったのか興味津々の顔で食らいついてきた。

「そうだけど・・・・・」