「それでおしまい? もう一個あったでしょ・・・セリフ」
「え?」

もう一個のセリフって・・・・・そこを突っ込まれるとは思わなかった。
わかったよ!

僕はもう開きなった。

「葵さんのことが好きだ!」

言った。
でも彼女はまだ不満そうな顔で僕を睨んでいる。
どうも納得してないようだ。

「あの・・・・・今度は何?」
僕はだんだんとイライラしてきた。

「今、葵って言ったよね? さっきは名前で呼んでくれたよ。誤魔化しても駄目だかんね」

イライラがクラクラへと変わる。

覚えていないけど、どうやら僕は彼女を名前で呼んでたらしい。

「はい、もう一度」

彼女からの容赦ない追い込みは続く。

彼女と出逢ってから僕は開き直りという無責任な度胸を手に入れた。

僕はさらに大きく息を吸い込む。

「スズカのことが好きだ! これからもずっと一緒にいたい」

顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。
でも、なぜかとても気持ちがいい。

そんな僕を彼女は目を細めて照れるように笑っている。
そしてスッと身体を僕から背けて空を見上げた。

「私もハルのこと、大好きだよ」

 ――え?

今、好きって言った?
僕のことを好きと言ってくれた?

でも、なぜだろう?
彼女は背を向けて僕を見てくれない。

「どうかしたの?」

横から彼女を覗き込む。
すると目を閉じた彼女の顔が真っ赤に染まっていた。

 ――あれ?

彼女が驚いた顔をして僕に気づく。

「ちょっと何見てんのよ!」

見たこともないような彼女の表情だった。
こんなに恥ずかしそうな仕草をする彼女は初めてだ。

「しょうがないでしょ。私のほうはリハーサル無しのぶっつけ本番だったんだから・・・」

真っ赤な顔になった彼女は俯きながら呟いた。

思わず笑いがこぼれた。
彼女がとても愛おしかった。

彼女も海を見つめながら笑い始めた。
その笑顔は誰よりも輝いて見えた。

「ずっと一緒にいたいな」

彼女はそう言いながら空を見上げる。

頬に光るものが見えたのは気のせいだろうか。

「空、真っ青だね・・・」
「うん。前に来た時と同じだ」

「ああ、花火の季節、終わっちゃったな・・・」
彼女が寂しそうに俯いた。

「花火大会は来年も再来年もずっとあるよ」
「そうだよね」

彼女の笑顔が眩しかった。