「そうだよね･･･これ以上は逆に迷惑かけちゃうね」

彼女は寂しそうに俯いた。
僕はすうっと大きく深呼吸をする。

「ちゃんと付き合って欲しいんだ、僕と」
「え？」

「スズカのことが好きだ！」

やっと自分の気持ちをはっきり伝えられた。

彼女の顔を見る。よほどびっくりしたようで無表情のまま黙って僕を見つめていた。

今、どんな彼女が気持ちなのかは分からない。
でもとにかく自分の気持ちを伝えたかった。

「これさ、またリハーサル？」

疑うような細い眼差しで僕を見つめる。

「違うよ！」

僕は怒ったように答えた。
彼女の顔が困惑した表情に変わる。

「本当にいいの？　私、心臓が･･･」
「関係ないよ！」

彼女の言葉を遮るように叫んだ。

「僕は何もできないかもしれないけど、これからもスズカと一緒にいたい。君と一緒に病気と闘いたい。辛い時や怖い時は言って欲しい。辛さも怖さも一緒に感じていきたい。そして楽しいことも･･･これからもずっと一緒に･･･ずっと一緒にいたい！」

自分の全てを出せた気がした。

でも、彼女は僕から顔を背けるように反対を向いた。
そして、そのまましばらく黙ったまま空を見上げていた。

どうしたんだろう？　
やっぱり駄目なのかな？

少し不安が膨らみ始めた時だ。
彼女はこちらのほうに向き直り、すっと僕の目の前に立った。

じっと僕の目を見つめている。

「やっぱりさっきのはリハーサルだな」

　――は？

「ど、どういう意味？」
「もう一回言ってくれる？」

「は？」

　彼女は一体何を言ってるんだ？

「だって心の準備ができてなかったんだもん。さっきと同じでいいから」
「あの･･･意味がよくわかんないんだけど」

「だから、さっきのはリハーサルってことだよ。今度が本番ね」
「あの･･･もしかしてもう一回言えってこと？　さっきの･･･」

彼女は大きく頷くと、構えるようにゆっくりと目を閉じた。

ちょっと待ってくよ。
さっきは勢いで言ってしまったけど、もう一回なんて･･･。

でも、やるしかない。
僕は再び大きく深呼吸をした。

「僕と･･･僕と付き合って欲しい！」

さすがに二度目となると恥ずかしい。


彼女はスッと目を開くと、キョトンとしたあどけない顔で僕を見つめた。

　――何？