マジメなハジメと蒼いスズメの恋愛リハーサル

明日はいよいよ手術だ。
今日、ハルくんが来てくれた。

もう逢えないと思っていたからすごく嬉しかった。

でも手術のことは最後まで言えなかった。
ごめんね、ハル。普通にお別れしたかったから。

今度の手術は今までのとは違い、かなり難しいらしい。
お父さんとお母さんの様子でも分かる。

もしかしたら、もう最後になってしまうかもしれない。

覚悟はできていた。
今まで生きてこられただけでも幸せだったから。
そう思っていた。

でもやっぱり怖い。
とっても寂しい。

でも、みんなに心配かけたくなかったから言えなかった。

私が悲しい顔をしたらみんなが悲しむだろうから。

だから一生懸命に明るく振る舞った。
そうすることで自分の気持ちも誤魔化してきたんだ。

ずっと頑張ってたのに。
ずっと寂しさと怖さを我慢してきたのに。

あいつは最後の日にブチ壊してくれた。

だから彼に私の全ての気持ちをぶつけてやった。

でも不思議だった。

彼に全てをぶつけたら寂しさや怖さを感じなくなった。

彼の身体はとても暖かかった。

ありがとう、ハル。
私の気持ちを全て受け止めてくれて。

僅かだったけど、君と一緒の時間はとても楽しかったよ。

彼がハルノートを置いていってくれた。
彼の小説を読むのは久しぶりだ。

話を読み進めていくと、ラストシーンが大きく変わっていた。
ヒロインが死ぬことはなく、ハッピーエンドになっていたのだ。

私を勇気づけるために変えてくれたのだろうか。
そんなワザとらしいくらいの気持ちがとても嬉しかった。

もう一度彼に逢いたい。

僅かな時間でもいい。

でも、もしかしたらダメかもしれないな。
だから私は彼にメッセージを書くことにした。

私の気持ちを残そう。
伝えられなかった彼への気持ちを。

「ありがとう、ハル。ずっと一緒にいるって言ってくれて」