遺書のようなファンレターに僕は怒りが込み上げた。

でも、その気持ち以上に涙が込み上げた。

手術が終わって目を覚ましたらすぐに怒鳴りつけてやろう。

本当に君はもう怖くなかったの? 
僕なんかで本当に安らげたの?

ごめんね。
もっと、もっと話を聞いてあげればよかった。

もっと前から・・・もっとずっと前から話を聞いてあげればよかった。
もっと前から一緒にいてあげればよかった。

やっぱり逢いたい。
もっと一緒にいたい。
だから・・・・・。

どれくらいの時間が経っただろうか。
公園にある大きな時計は六時をまわっていた。

携帯の画面を見る。
でも新しい着信メッセージは無かった。

手術はまだ終わらないのだろうか?
心の中の不安な気持ちが膨れ上がる。

ベンチでずっと動かなかったせいだろうか、腰に感覚が無かった。
どうも痺れたようだ。

いつの間にかまわりには春の湿った空気が漂っていた。

ポツリと頭の上に何かが落ちた。
また花びらだろうか? 

空を見上げた。
違う。雨だ。
そう言えば天気予報は午後から雨だった。

ヤバい。どこかで雨宿りしないと。
そう思って立ち上がった時、ジャケットのポケットに入れていた携帯がコトンと音をたてて、ベンチの上に落ちた。

それを拾おうとしたその時、バイブになっていた携帯が木製のベンチに共鳴して震えた。

 ――メール? 手術が終わった?

僕ははやる気持ちを抑えながら携帯の画面を開いた。
やはりメールの送り主は彼女のお母さんだ。

心臓が抉られるように苦しくなる。

僕は祈りながらメールの開封ボタンを押した。
その液晶画面に表示された文字を見る。

そして僕の目に映るものは全て真っ白になった。