こんな時にお茶なんて・・・・・そんな気分にとてもなれなかった。
カフェの店内は人は疎らで数人のお見舞い客らしき人がいるだけだ。
お母さんが先に窓際の隅の席に座り、僕が後からその前の席に座る。
その窓からは外の公園の桜がよく見えた。
「見て、桜がとても綺麗よ・・・・・」
お母さんに言われて窓の外に目を向ける。
たしかに桜がとても綺麗だった。
その桜を見ているうちに、僕の心はだんだんと落ち着きを取り戻した。
そうか、お母さんは僕を落ち着かせるためにここに誘ってくれたんだ。
何を騒いでいるんだ。
お母さんのほうがよっぽど不安な気持ちでいっぱいのはずなのに。
「すいません。騒いでしまって・・・」
お母さんはまた首を横に振った。
「冴木君とはこうやってお話をしたいと前から思ってたの。きのうはお礼も言う時間もなかったし・・・・・」
どうしてだろう。お母さんはとても朗らかな優しい顔をしていた。
彼女が大きな手術の最中だというのに。
お母さんの落ち着いたその安らかな表情は、かえって僕を不安にさせた。
「手術のことは言わなくてごめんなさい。でも涼芽の気持ちも分かってあげてね。本当のことを言うのが辛かったんだと思う」
分かってる。分かってるんだ。
でもやっぱり言って欲しかった。
最後になるかも・・・・・いや、そんなこと考えるのは止めよう。
「冴木君。涼芽と一緒にいてくれて、本当にありがとう」
「いえ、僕は何も・・・」
そう。僕はまだ何もしてあげられていない。
「昨夜はあの子大変だったのよ。手術が不安だったのか、ずっと泣いたりわめいたり・・・・・」
「そうだったんですか・・・・・」
いつも明るいイメージの彼女からはそんな姿は想像がつかなかった。
でも今思えば、病室で最初に会った時の彼女は様子がおかしかった気がする。
「でも冴木君が来てくれたあとはすっかり落ち着いて、いつもの涼芽に戻ったの。本当にありがとう」
「いいえ、僕は本当に何もできなかったんです。元気付けるどころか、かえって不安にさせることをたくさん言っちゃって・・・・・」
お母さんはゆっくり首を横に振った。
「今日ね、手術室に入る前に涼芽と少しだけ話すことができたの。今日の涼芽はとっても明るくて、涼芽らしい涼芽だった」
涼芽らしい涼芽。
カフェの店内は人は疎らで数人のお見舞い客らしき人がいるだけだ。
お母さんが先に窓際の隅の席に座り、僕が後からその前の席に座る。
その窓からは外の公園の桜がよく見えた。
「見て、桜がとても綺麗よ・・・・・」
お母さんに言われて窓の外に目を向ける。
たしかに桜がとても綺麗だった。
その桜を見ているうちに、僕の心はだんだんと落ち着きを取り戻した。
そうか、お母さんは僕を落ち着かせるためにここに誘ってくれたんだ。
何を騒いでいるんだ。
お母さんのほうがよっぽど不安な気持ちでいっぱいのはずなのに。
「すいません。騒いでしまって・・・」
お母さんはまた首を横に振った。
「冴木君とはこうやってお話をしたいと前から思ってたの。きのうはお礼も言う時間もなかったし・・・・・」
どうしてだろう。お母さんはとても朗らかな優しい顔をしていた。
彼女が大きな手術の最中だというのに。
お母さんの落ち着いたその安らかな表情は、かえって僕を不安にさせた。
「手術のことは言わなくてごめんなさい。でも涼芽の気持ちも分かってあげてね。本当のことを言うのが辛かったんだと思う」
分かってる。分かってるんだ。
でもやっぱり言って欲しかった。
最後になるかも・・・・・いや、そんなこと考えるのは止めよう。
「冴木君。涼芽と一緒にいてくれて、本当にありがとう」
「いえ、僕は何も・・・」
そう。僕はまだ何もしてあげられていない。
「昨夜はあの子大変だったのよ。手術が不安だったのか、ずっと泣いたりわめいたり・・・・・」
「そうだったんですか・・・・・」
いつも明るいイメージの彼女からはそんな姿は想像がつかなかった。
でも今思えば、病室で最初に会った時の彼女は様子がおかしかった気がする。
「でも冴木君が来てくれたあとはすっかり落ち着いて、いつもの涼芽に戻ったの。本当にありがとう」
「いいえ、僕は本当に何もできなかったんです。元気付けるどころか、かえって不安にさせることをたくさん言っちゃって・・・・・」
お母さんはゆっくり首を横に振った。
「今日ね、手術室に入る前に涼芽と少しだけ話すことができたの。今日の涼芽はとっても明るくて、涼芽らしい涼芽だった」
涼芽らしい涼芽。