「そこに書いてあった小説を読んで応援のメッセージを書いてくれてたのも葵さんだよね」

彼女は少し驚いた顔をしたあと、大きなため息をついてフッと笑った。

「やっと分かったの。おっそいなあ。あんなすごいヒント付いてるのに」
「ヒント?」

「スズメのイラストが描いてあったっしょ」
「いや・・・・あれどう見てもペンギンでしょ」
「ひどいなあ。まあいっか。私、ペンギンも大好きだから」

彼女は僕を睨みながらも笑い出した。

それはいつもの彼女の笑顔だった。


「ありがとう。僕の小説を読んでくれて。それに応援のメッセージまでくれたのに気づかなくてごめん」

「ううん。私こそごめんね。勝手に読んで、勝手にメッセージ書き込んで。君はきっといい小説家になれるよ」

「そんな、僕の小説なんて全然ダメだよ」

「ううん。本当に面白かったよ。そうだ、素敵な物語を読ませてくれたお礼として君に小説のネタをあげるよ」

「ネタ?」

「うん。高校生の恋愛物語だよ。おもしろいと思ったら参考にしてくれる?」

「恋愛物語?」

彼女が恋愛小説のネタを持っているなんて初耳だ。

「ある高校生の女の子がヒロインなの。もちろんとっても美少女だよ」

彼女はその物語《ストーリー》を語り始めた。

          ☆ ☆ ☆ 

彼女は隣のクラスの男の子の彼に恋をしてしまいました。
でも、彼女はとっても内気な子で、とても告白する勇気を持っていませんでした。

そんなある日、彼女はクラスメートの友達から恋愛相談を受けます。
なんとその友達も彼のことが好きだと言うんです。

びっくりした彼女は悩みました。
でも彼女はその友達を応援することにしました。

友達は彼に告白することを決意します。

いよいよ彼に告白する日が来ました。
場所は昼休みの学校の屋上です。

彼女は後ろでそっと友達の行方を見守っていました。

友達は彼に告白しようと近づきます。
でも友達は彼の目の前まで行きながらあと一歩勇気が出せません。

結局、何も言えずに彼の前を通り過ぎてしまいます。

それを見かねた彼女は友達に叫びました。
「言いたいことをハッキリ言いなよ」

するとなんてことでしょう。
驚いたことに彼のほうがその友達に告白を始めたのです。

彼女も友達もそれはびっくりしました。