「ちょっと待って。寝てたから髪もグチャグチャだし顔ひどく腫れてるの。お母さんも酷いな。先に言ってくれればいいのに」
「ごめんね。僕、ちょっと外に出てようか?」
「ごめん。そこにいていいけど、しばらく向こうむいててくれる?」
「うん」

僕はそのまま彼女に背を向けた。

彼女の目が赤く腫れているように見えた。
寝ていたせいだろうか。

しばらく待つと彼女から振り返ってもいいとの許可が出た。

「ごめんね。酷い顔でしょ?」

彼女は恥ずかしそうに俯く。

「僕のほうこそごめん。突然来ちゃって・・・」

次の言葉に詰まる。
言いたいことはたくさんあったはずなのに・・・。

そうだ。お礼を言わなきゃ。
ペン子さんだった彼女に、僕の小説を応援してくれたお礼を。

言い出そうとしたその瞬間に彼女から先に声が出た。

「今までありがとう。ごめんね、いろいろ私に付き合せちゃって。君にはずっとお礼が言いたかったんだ」

先に彼女からお礼を言われてしまった。

今日の彼女は何か違う雰囲気を感じた。
しばらく会っていなかったせいだろうか。

「何を言ってるの? 付き合ってもらってたのは僕のほうでしょ。ダメな僕にずっと女の子と付き合うリハーサルまでしてもらって。麻生さんとは結局うまくいかなかったけど・・・」

「うまくいかなかったって・・・・・菜美ちゃんと付き合うんじゃないの?」

僕は黙って首を横に振った。

「僕が捜してた人は麻生さんじゃなかったんだ」
「捜してたって?」

そう、それはペン子さんのことだ。

「今日ね、学校で麻生さんから言われた。僕のこと、好きだったって」
彼女はびっくりした顔をしながら僕を見た。
「屋上で僕が告白した日のことも聞いたよ。葵さんに相談して僕に告白しようって決めたことも」

「そうか。菜美ちゃん、やっと自分から好きだって言えたんだ。がんばったな・・・」

彼女は嬉しそうに微笑んだ。
久しぶりに見る彼女の笑顔だ。

「葵さんのこと、大事にして欲しいって言われたよ」
「どういう・・・・・こと?」

彼女が怪訝な顔になった。

ちゃんと確かめなきゃ。
ペン子さんのこと。

「葵さんがペン子さんだったんだね」
「ペン子さん?」

ペン子さんって言っても分かる訳ないか。

「僕が屋上に忘れたハルノートを拾ってくれたの・・・葵さんだったんだね」
「え?」