正直な人。顔か顔じゃないかなんて聞く前からわかってるのに、わざと聞いた自分が悪者に思えてくる。正直で鈍感で、とても男らしい人だ。


「私がみんなと違うから?」


ああいったい誰が悪いんだろう、と、目の前の男の子の顔を見ながら考える。きっと優しい人に罪はない。けれど傷つけられた側からは、この気持ちを経験したことのない人全員が罪深いように見えてしまうことがあるのだ。

派手な顔が必ずしも美しいわけではない。派手なだけで言ったら、クラスメイトの渡会さんも結構目に細工のある顔だけれど、あれはわかりやすく細工だから、派手でもすごくモテるわけではない。しかし私の顔は派手だからというよりも、アメリカの血が半分入っている、明らかに「違う」顔だから目を引くのだと思う。


それ以降、好きだと言ってくれた彼は何度も私を説得しようとしたけれど、私の頭の中はもうすっかり、図書室に行ったらあの人に会えるだろうか、とそればかりだった。

私にはいつも放課後になると一番か二番目に早く教室を飛び出し、図書室へ向かう習慣がある。
私の高校には大きな自習室という教室が設置されているため、受験勉強をする人は専らそっちへ向かい、図書室にあまり勉強しに来る人の姿はない。

図書室の中は机といすが点在しており、彼はいつも入口からは見えない奥の椅子に座って本を読んでいた。私はそこで彼の向かいの席に座り、閉館時間まで彼と小さな声で話す。彼はどんな瞬間も声を荒げることをしないので、いつもとても穏やかな時間が流れている。

私は彼のことを相川、と呼んでいる。名前を尋ねたときに、彼が相川でいいよ、としか言わなかったからだ。色素の薄い髪に、色素の薄い目の色を伏せている。瞳の色が薄い人って視力が悪いんじゃなかったっけ、と言うと彼は笑った。

私と違ってそこまで主張の強い顔ではないけれど、細くて高い鼻は少し特徴的だった。


「今日は何か面白いことがあったの?」


相川は決まって私にそう訊ねる。私は面白かったことがないか、一日のことを頭の中で洗って考える。


「宇宙について考えた。宇宙って無限じゃないんでしょ?伸びたり縮んだりしてるんでしょ、そしたらその外側って何なんだろうって」

「うん、答えは出た?」

「宇宙その?が発生する」

「君は本当に面白いね」