それが起こったのは水曜日だった。図書室で待ち合わせがある曜日だ。
 恋人同士になってからも、図書室の待ち合わせは続いていた。
 あれから美久は図書室にあるハードカバーの魔法学校の本はすべて読んでしまった。
 最後まで展開にはらはらしてしまって。
 でも最後はハッピーエンドだった。主人公とヒロインは恋人同士になったし、魔法学校も卒業となっていた。
 そして親友にも彼女ができていた。美久はそのくだりを読んだとき、とても嬉しくなってしまった。
 主人公のことは、わかりやすく格好良かったので好きだった。勇気があって強くて男らしくて……まさに物語の主人公でヒーローだったのだから。
 でも親友の男の子のことも好きだった。確かに主人公に比べれば地味なタイプで目立たないのかもしれない。
 けれど内に秘めた情熱は主人公にも負けないくらいだと、話が進むうちに強く伝わってきた。その魅力に気付いた女の子は確かにいたのだ。
 彼が幸せになったことを嬉しく思う。物語の登場人物なのに、七巻という大作を読んでいくうちに、まるで友達のように感じるようになっていたのだ。
 文庫本もゆっくり集めていって、次は五巻を買うところだ。友達のように感じていたキャラクターがいつも手元にいてくれるのはとても嬉しい、と毎月買うのがより嬉しくなっていた。
 快は美久より読みはじめたのがあとだったので、今度最終巻を借りたところだった。
 そろそろ読み終わったかもしれない。快は読むのが速いから。
 感想を聞くのが美久は楽しみだった。読み終わったら同じ目線で話ができるだろうから。
 今日は最終巻の感想が聞けるだろうかとわくわくしていたのだけど。