「合同なんてダルいー」
「えー、いいじゃん。バスケなんてちょっとプレイしたらあとは見てるだけなんだから。しゃべってても怒られないしー」
 ある日の更衣室。いつもどおりにクラスの女子で着替えをしていたのだけど、不満の声やら、逆に楽しみにする声やらで騒がしかった。
 今日の三、四時限目は合同体育。レクリエーションに近いこと。
 美久にとってはあまり嬉しくないことだ。
 でも今回のものは男子も一緒の合同体育なのだ。だからずっと試合をしっぱなしということはないし、見ている時間も多いだろう。
 だからあんまり気にしないで隅っこで見ていればいいや、と思って着替えをしていたのだけど。
「遅れちゃったー!」
 がらっとドアが開いて、入ってきたのは留依だった。二時限目のあとに先生から「教材を職員室まで運んでくれ」と言われていたのを見ていた。それは教科の係に任命されたのでただのお手伝いであるし、更衣室へ行くまでの通り道に教材をついでに置くだけでいい。
 慣れている子なら。
 なにしろ留依はまだ転校してきてやっと二週間というところなのだ。学校の構造だってまだ完璧に覚えられてはいないだろう。それで手間取ってしまった、というところらしい。
「あっ、渚さん!」
 何人かの女子が振り返って、留依を見止めて明るい声を出す。
「今までかかったの?」
「酷くない? 渚さんはまだ慣れてないのに合同体育の前になんて頼まなくてもいいのにね」
 留依に同情するような声。でも留依は笑って「すぐに慣れるから大丈夫だよ。それに、やらないと慣れられないしさ!」なんて前向きなことを言う。
 そしてそのまま美久の隣へやってきた。別におかしなことでもない、友達という以外にも、今日の更衣室はB組の子たちも使っているので割合ひとが多くてそこしか空いていなかったのだから。
「隣のロッカー、使っていい?」
 聞かれて美久は「うん、どうぞ」と言った。
 留依は「ありがと!」と、ロッカーを開けて、空いているのを確かめてそこへ荷物を置いた。
 体育用の布の袋。中身は体操着、ジャージ、それからタオルや制汗剤とか、そういうものだろう。女子の定番。