快と付き合うことになった話は勿論、留依に一番初めに話した。椿を見に行った翌日のことだ。
 留依は「おめでとう!」と言って、やっぱり抱きしめてくれた。
 抱きしめてくれるひとがいるのはとても幸せなこと。
 快と留依では意味が『彼氏』『親友』と意味が違っても、幸せなこと。
 また涙が湧きそうになったけれど、飲み込んで美久は「ありがとう」という返事に変えた。
 これもやはり放課後だった。今日は留依に声をかけたのだ。
 「聞いてほしい話があるから」と。
 留依はすぐになんの話かわかったのだろう。また部屋に招いてくれて、そして美久の話を聞いてくれた次第。もう留依のほうが嬉しそうな様子を見せてくれた。
 「お祝いにお茶でも淹れてくるね!」と淹れてくれたのはあったかいミルクティーだった。
 ほこほことあたたかくてほのかに甘いそれを飲むうちに、留依が言った。
「美久は変わったね」
 自覚はあったので、ちょっとくすぐったく思いつつも美久は頷いた。
「うん」
 前にも、用具室に閉じ込められたあと話したときも留依は言ってくれたけれど、快とのことを実行できて、実らせることができたあとでは、より強く実感できる。
 でもすぐに言うべきことに気付く。
「ありがとう。留依ちゃんのおかげだよ」
 留依は美久のお礼に、にこっと笑った。
「そう言ってもらえたら嬉しいな」
 そのあと、ちょっと前の話になった。今となっては数ヵ月前のことの話だ。
「美久、髪型を変えたときは私が半分引っ張ってった感じだったじゃん」
 留依の言う通りだったのでちょっと恥ずかしくなってしまう。でもあれがすべてのはじまりだったのだ。それは留依がくれたもの。
「だからちょっと強引になっちゃって、美久は本当は気が進まないんじゃないかなって思ったんだけど……」
 留依がミルクティーのマグカップを手にして話してくれたのは、ここまで美久のことを引っ張っていってくれたことだった。美久はちょっと申し訳なくなった。