そんなものを抱えているうちに、外からバタバタと足音がした。今度は複数だった。
「美久! 久保田くん! 鍵持ってきたよ!」
 ガチャガチャと開けられる音がする。
「綾織! 久保田! 無事か!」
 大人の声もした。桜木先生だ。留依と一緒に来てくれたようだ。
 すぐにガチャッと扉が開いた。
 すっかり暗くなった、外。声の通り、留依と桜木先生が立っていた。

 助かった。

 実感して、美久は一度立ち上がったが、ふらふらとへたり込んでしまった。
 もう頭の中がぐちゃぐちゃだったのだ。
「美久!」
 留依が近付いてきてくれたけれど、快のほうが早かった。美久の腕を掴む。
「お、おい、綾織さん! 大丈夫か」
「だ、だいじょう……ぶ……」
 なんとか言った。自分の腕を掴む手。今は優しい、快のもの。それに心底安心した。
 留依が近付いてきて、美久の前に膝をついた。腕を伸ばして抱きしめてくれる。
「心配したよぉー! 全然戻ってこないからどうしたのかと思って……桜木先生も美久が来ないって言ってたから一緒に探して……」
 留依のほうが泣いているようだった。声が震えている。
 心配をかけてしまった。
 それにずっと探してくれていたのだ。それが嬉しくてならない。
「ありがとう……」
「見つかって良かった……用具室の窓が明るいって、渚が言ったんだ。ライト……か?」
 桜木先生も入ってきて、窓を見上げた。そこにはペンライトがあるはずだ。快がセットしてくれたもの。役立ってくれたのだ。
「はい。ペンライトを持っていたので……誰かが見つけてくれたらって……」
「ああ、あれが目印になったみたいだ。なかったらもっと時間がかかってたかもしれない。久保田、よくやったな」
 桜木先生が快の肩を叩いた。
 これでこの騒動はひと段落した。


 美久と快は職員室へ連れて行かれてヒーターの前であたためさせられて、熱い飲み物も振舞われた。ほっと一息つけたものだ。
 美久と快を閉じ込めたあかり達については「明日、話をする」と桜木先生が言ってくれた。
 それで、その日は桜木先生が車で美久達を家まで送ってくれた。
 家でも美久の帰りが遅いと心配していたお母さん。
 桜木先生が「申し訳ございません。私の管理不行き届きです」と、なにも悪くないのに謝ってくれて。
 これで本当にひと段落した。
 快から言われた言葉がじわじわ染み込んで美久の顔を熱くしていくのは、むしろこのあとだったけれど。