それから一週間ほど。
留依は予想通りにあっさりクラスに溶け込んだ。今ではクラスの中で留依とひとことも口をきいていない子はいないだろう。
留依はわけへだてなく、機会があれば「よろしくね。今日の授業ではさ……」と声をかけて、何気ない話を話題にするのだ。返事に困らないようなことを。
だからみんな留依を気に入っただろうし、少なくとも嫌う子はいなかっただろう。
勿論男子にも、だ。
男子にとってきっとそれは嬉しいことだろう。すぐ留依に恋する男子もいるのではないかと思わされた。
でも留依は、だからといって美久をまったく放っておくことなどしなかった。
むしろ一番話しかけてくれたし「お弁当一緒に食べようよ」「今日はお弁当持ってないんだけど、学食のこと、教えて欲しいな」なんて一緒にいてくれた。
美久はそれに嬉しくなって当然だった。友達が増えただけでなく、前から知り合っている仲であるし、おまけにこんな素敵な子なのだ。
でも美久はやっぱり内気で。
留依がクラスの中心的な女子、あかりなどの子と話しているときは近付けなかった。
邪魔にされるかもしれない、と思ってしまうのだ。
みんな留依と話したくて、留依の前からの友達は近くにいて欲しくないかもしれない、なんて。
それにこんな地味な子となんて。共通の話題も少ないだろうし。
よって、留依とべったり一緒、ということはなかった。
折につけて一緒に過ごして、話して、たまには一緒に帰ったけれど、小学校の頃とは少し違った。
それは留依が転校生という立場なのもあっただろう。
留依とて、なにも考えずにこう動いているはずはない。新しい環境でうまくやろうと頑張っているのだ。きっと留依なりに。それが得意なことだから、あまり苦労していないように見えるだけで。
それなら自分が邪魔をしてはいけない、とやはり美久は思うのだった。
このくらいの付き合いで満足しているし。
元々、留依と転校で別れてしまってからは特別に仲のいい友達というのはいなかったのだ。あまり負担でもない。
だからある日の放課後。留依が「テニス部に入りたいんだ。だから見学してくるね!」と行ってしまっても、むしろ良かったと思った。
留依は昔から運動がよくできたし、テニスを今やっているとは知らなかったけれど、中学校などではじめたのかもしれない。
だから、それを生かせて、部活を楽しんだり活躍できたりするならいいと思った。応援したいと思う。
よって美久は今日の放課後は一人だった。文芸部も今日は休み。元々、週に三日くらいしか活動がないし、それも絶対に参加しないといけないわけではない。
だから美久は一人で過ごすときの定番、図書室へ行くことにした。
今日は本を二冊ほど抱えていた。前に借りたものだ。
一週間ほど前に一巻を借りたのだけど、面白かったのであっというまに読み終わってしまった。そして三日ほど前に、二、三巻を借りた。やっぱりとても面白かった。
まだ続きがあるので、今度はそれを借りたかった。ちょうど棚に残っているかはわからないけれど……。
でも別になくなってしまうものじゃない。今、なくても少し待っていればいいのだ。
よって、期待はしていたけれど軽い気持ちで図書室へ向かったのだった。そこでちょっとした事件が起こるとは知らないままに。
留依は予想通りにあっさりクラスに溶け込んだ。今ではクラスの中で留依とひとことも口をきいていない子はいないだろう。
留依はわけへだてなく、機会があれば「よろしくね。今日の授業ではさ……」と声をかけて、何気ない話を話題にするのだ。返事に困らないようなことを。
だからみんな留依を気に入っただろうし、少なくとも嫌う子はいなかっただろう。
勿論男子にも、だ。
男子にとってきっとそれは嬉しいことだろう。すぐ留依に恋する男子もいるのではないかと思わされた。
でも留依は、だからといって美久をまったく放っておくことなどしなかった。
むしろ一番話しかけてくれたし「お弁当一緒に食べようよ」「今日はお弁当持ってないんだけど、学食のこと、教えて欲しいな」なんて一緒にいてくれた。
美久はそれに嬉しくなって当然だった。友達が増えただけでなく、前から知り合っている仲であるし、おまけにこんな素敵な子なのだ。
でも美久はやっぱり内気で。
留依がクラスの中心的な女子、あかりなどの子と話しているときは近付けなかった。
邪魔にされるかもしれない、と思ってしまうのだ。
みんな留依と話したくて、留依の前からの友達は近くにいて欲しくないかもしれない、なんて。
それにこんな地味な子となんて。共通の話題も少ないだろうし。
よって、留依とべったり一緒、ということはなかった。
折につけて一緒に過ごして、話して、たまには一緒に帰ったけれど、小学校の頃とは少し違った。
それは留依が転校生という立場なのもあっただろう。
留依とて、なにも考えずにこう動いているはずはない。新しい環境でうまくやろうと頑張っているのだ。きっと留依なりに。それが得意なことだから、あまり苦労していないように見えるだけで。
それなら自分が邪魔をしてはいけない、とやはり美久は思うのだった。
このくらいの付き合いで満足しているし。
元々、留依と転校で別れてしまってからは特別に仲のいい友達というのはいなかったのだ。あまり負担でもない。
だからある日の放課後。留依が「テニス部に入りたいんだ。だから見学してくるね!」と行ってしまっても、むしろ良かったと思った。
留依は昔から運動がよくできたし、テニスを今やっているとは知らなかったけれど、中学校などではじめたのかもしれない。
だから、それを生かせて、部活を楽しんだり活躍できたりするならいいと思った。応援したいと思う。
よって美久は今日の放課後は一人だった。文芸部も今日は休み。元々、週に三日くらいしか活動がないし、それも絶対に参加しないといけないわけではない。
だから美久は一人で過ごすときの定番、図書室へ行くことにした。
今日は本を二冊ほど抱えていた。前に借りたものだ。
一週間ほど前に一巻を借りたのだけど、面白かったのであっというまに読み終わってしまった。そして三日ほど前に、二、三巻を借りた。やっぱりとても面白かった。
まだ続きがあるので、今度はそれを借りたかった。ちょうど棚に残っているかはわからないけれど……。
でも別になくなってしまうものじゃない。今、なくても少し待っていればいいのだ。
よって、期待はしていたけれど軽い気持ちで図書室へ向かったのだった。そこでちょっとした事件が起こるとは知らないままに。