紹介が終わって、留依の席も指定されて、そこは教室の一番はしっこで、隣や近くとはいかなかったけれど、美久はそちらばかり気にしてしまった。
留依はこれだけ明るい性格なのだ、近くの席の子に「よろしくね」と挨拶して、教科書を見せてもらったりしていたようだ。
明るくて積極的。それは子供の頃から変わっていないらしい。
小学校時代も、引っ込み思案な美久をあちこち引っ張っていってくれたものだ。
当時のことを懐かしく思う。
そして当たり前のように、留依は一時限目が終わるなり、美久のところへ来てくれた。
「美久! 十色高校だったんだねぇ。久しぶり~!」
「う、うん。学校の名前、年賀状とかに書いとけばよかったね……」
こちらへクラスメイトの視線が集まるのを感じて、美久はどきどきしつつ、言った。
みんな、本当は転校生の留依と話したいだろう。
これほどかわいくて、明るくて、楽しそうな留依なのだ。みんなすぐに仲良くなりたいと思ったはず。
それを留依は小学校で一緒だった美久のところへ行ってしまった。
別に、元からの友達にこんなところで再会したら、誰でもそうなるだろう。留依の気持ちはよくわかられているはず。
だから怒られたりはしないはずだけど。
それでも自分込みで注目されているというのは、美久には緊張してしまうことだったのだ。
「ううん。サプライズみたいでこれはこれで!」
そう言った留依はやっぱりとても前向きで。
「それに同じクラスになったのは偶然だしさ! それもすごいよね」
留依はぺらぺらとしゃべっていく。美久がちょっとおどおどした受け答えをしてしまっても、気にした様子はない。
だって子供の頃、一緒にいた頃からこんな感じだったのだ。留依にとっては今更、ということなのかもしれない。
「おっと、休み時間って十分だよね。そろそろ終わる感じ?」
一通りしゃべったあと、留依は時計を見上げて言った。美久も釣られて時計を見る。確かにもうそろそろ次の授業の準備をしなくてはだ。
「う、うん。二時限目と三時限目の間は二十分なんだけど、今は」
「そうなんだ! じゃ、そのときもっと話を……あ、でもクラスのひとたちとも話したほうがいいよねぇ。これから一緒のクラスなんだし」
もっと時間があると知って留依の顔は輝いたのだけど、すぐになにかに気付いたという顔になった。留依が言うのももっともである。
たとえ昔からの友達がいるからといっても、その子とばかり話しているわけにはいかないだろう。クラスでこれからうまくやっていくためには。
留依ならあっさりクラスに溶け込めるだろうけど。そういう性質だ。
明るくて、積極的で、おまけにひとに優しい。美久と仲良くしてくれたのだって、そういう性格があったからこそだろう。
「うん……そうかも」
「じゃ、次はそうしようかな。放課後は時間ある?」
もう少しだけ話して、今日は一緒に帰ろうという話になった。留依の新しい家がどっちのほうなのかはわからないけれど、少なくとも学校の最寄り駅までは一緒だろうと思ったのだ。
それで留依は席へ戻ってしまう。休み時間が終わる、そのわずかな間なのに、近くの席の子と少しだけ話しているのが見えた。
「うん、小学校の頃、仲良かったの」
「久しぶりに会えてびっくりしたよー」
自分が話題になっているらしい。この状況では当然だろうけど。
美久はくすぐったいやら、ちょっともじもじしてしまうやらだった。
逆に、美久のほうに「前に友達だったの?」と聞いてくる子はいなかった。
別におかしなことではない。いつもこうなのだ。
美久が引っ込み思案なのはクラスでもう知られているのだから。
それに聞かなくても、さっきの会話をする様子でわかられただろうから。
だからこちらから言うことでもないし、と美久はそれでいいことにしてしまった。
ちょっとずるいのかな、と思いはしたけれど。普段ならそれで別にいいと気にもしないのに、明るく話している留依に久しぶりに接したら、なぜか思ってしまったのだ。
留依はこれだけ明るい性格なのだ、近くの席の子に「よろしくね」と挨拶して、教科書を見せてもらったりしていたようだ。
明るくて積極的。それは子供の頃から変わっていないらしい。
小学校時代も、引っ込み思案な美久をあちこち引っ張っていってくれたものだ。
当時のことを懐かしく思う。
そして当たり前のように、留依は一時限目が終わるなり、美久のところへ来てくれた。
「美久! 十色高校だったんだねぇ。久しぶり~!」
「う、うん。学校の名前、年賀状とかに書いとけばよかったね……」
こちらへクラスメイトの視線が集まるのを感じて、美久はどきどきしつつ、言った。
みんな、本当は転校生の留依と話したいだろう。
これほどかわいくて、明るくて、楽しそうな留依なのだ。みんなすぐに仲良くなりたいと思ったはず。
それを留依は小学校で一緒だった美久のところへ行ってしまった。
別に、元からの友達にこんなところで再会したら、誰でもそうなるだろう。留依の気持ちはよくわかられているはず。
だから怒られたりはしないはずだけど。
それでも自分込みで注目されているというのは、美久には緊張してしまうことだったのだ。
「ううん。サプライズみたいでこれはこれで!」
そう言った留依はやっぱりとても前向きで。
「それに同じクラスになったのは偶然だしさ! それもすごいよね」
留依はぺらぺらとしゃべっていく。美久がちょっとおどおどした受け答えをしてしまっても、気にした様子はない。
だって子供の頃、一緒にいた頃からこんな感じだったのだ。留依にとっては今更、ということなのかもしれない。
「おっと、休み時間って十分だよね。そろそろ終わる感じ?」
一通りしゃべったあと、留依は時計を見上げて言った。美久も釣られて時計を見る。確かにもうそろそろ次の授業の準備をしなくてはだ。
「う、うん。二時限目と三時限目の間は二十分なんだけど、今は」
「そうなんだ! じゃ、そのときもっと話を……あ、でもクラスのひとたちとも話したほうがいいよねぇ。これから一緒のクラスなんだし」
もっと時間があると知って留依の顔は輝いたのだけど、すぐになにかに気付いたという顔になった。留依が言うのももっともである。
たとえ昔からの友達がいるからといっても、その子とばかり話しているわけにはいかないだろう。クラスでこれからうまくやっていくためには。
留依ならあっさりクラスに溶け込めるだろうけど。そういう性質だ。
明るくて、積極的で、おまけにひとに優しい。美久と仲良くしてくれたのだって、そういう性格があったからこそだろう。
「うん……そうかも」
「じゃ、次はそうしようかな。放課後は時間ある?」
もう少しだけ話して、今日は一緒に帰ろうという話になった。留依の新しい家がどっちのほうなのかはわからないけれど、少なくとも学校の最寄り駅までは一緒だろうと思ったのだ。
それで留依は席へ戻ってしまう。休み時間が終わる、そのわずかな間なのに、近くの席の子と少しだけ話しているのが見えた。
「うん、小学校の頃、仲良かったの」
「久しぶりに会えてびっくりしたよー」
自分が話題になっているらしい。この状況では当然だろうけど。
美久はくすぐったいやら、ちょっともじもじしてしまうやらだった。
逆に、美久のほうに「前に友達だったの?」と聞いてくる子はいなかった。
別におかしなことではない。いつもこうなのだ。
美久が引っ込み思案なのはクラスでもう知られているのだから。
それに聞かなくても、さっきの会話をする様子でわかられただろうから。
だからこちらから言うことでもないし、と美久はそれでいいことにしてしまった。
ちょっとずるいのかな、と思いはしたけれど。普段ならそれで別にいいと気にもしないのに、明るく話している留依に久しぶりに接したら、なぜか思ってしまったのだ。