期末テストも無事に終わった。そのあとの水曜日。快と待ち合わせをするのも三回目。ちょっとどきどきしつつ美久は図書室を訪れた。
 留依とあんな話をしたのだ、どうしても気になってしまう。
 自分は快のことが好きなのだろうか。考えはじめたら完全には否定できない気がしたのだ。
 少なくともいいひとだと思っていて、友達……友達、だろう、既に……いい友達だと思っているのは確かなのだから。
 でもその先となると。
 恋愛経験値の少ない美久にはよくわからなかった。
「あ、遅くなっちゃったかな。ごめん」
 美久が図書室の閲覧コーナーの机についていると、快がそこへやってきた。入り口から近いのでここに座っていたのだけど、幸いすぐに気付いてもらえたようだ。
 特に図書室のどこで、と決めてはいなかったのだけど、ここにして良かったようだ。
 快に声をかけられて、振り向いて姿を見て、何故だかどきどきしてしまった。図書室に来たときよりそれは強いもので。
 前はこんなことはなかったのに、と思ってから思いなおす。
 いや、完全にないということはなかった。
 本屋さんで手に触れられたとき。
 髪型を似合ってる、と褒めてくれたとき。
 それからこの図書室での待ち合わせをしたいと言ってくれたとき。
 そういうときは心臓が高鳴ってしまって仕方なかったではないか。
 でも今、思い出すと顔が熱くなってしまいそうだったので、意識して引っ込めるようにした。笑みを浮かべる。
「ううん、さっき来たところだよ」
「掃除当番が長引いちゃってさ。……なんかいい本、見つけた?」
 快は言いながら、美久の隣の席を引いて腰かけた。隣同士座ることになって、引っ込めたどきどきする気持ちはすぐに復活してしまう。それにだいぶ戸惑った美久であった。
「う、うん。見つけたっていうか、あの文庫本の二巻を買ったから、最近はこれを読んでるの」
 少し前に、図書室にある五巻は無事見つけて借りていた。それも一通り読んだので、文庫版の二巻を買ったのだ。一ヵ月に一冊と決めたので、今回も一冊だけ。
 ハードカバー版と文庫版を行ったり来たりして読んでいることになるが、文章がうまいためか、話の展開がすっと頭に入ってきて、混乱をきたすことはない。それはすごいことだと思う。
 文庫を快に見せてしばらく話した。快も二巻を既に読んでいるので、ここのシーンが好きだとか言い合う。