そんなこんなで次の日曜日。
 美久は留依に連れられて『ヘアサロン・チュチュ』を訪れていた。
 美久は入り口から中を見て、すでに「はぁー……」と心の中で感嘆のため息をついてしまった。
 なんてオシャレできらきらしたところなのだろう。
 こんなところドラマでしか見たことがない、と思う。
 あるものは美容院と同じ。髪を切る椅子、髪を洗ったり流したりする洗し台と椅子。あとは雑誌やコミックスが棚にあったり。
 でもオシャレレベルが桁違いだった。棚はぴしっとした白い木材でできているし、コミックスもきっちり並べられている。
 椅子こそ普通だが、その前の鏡にはレースのシールかなにかで装飾がされているし、化粧品のかわいいボトルやら、雑貨屋さんに売っているようななにかのトレイやらカゴやらが置かれている。
 まるでお金持ちのお嬢様のお部屋みたい。
 美久はそんなふうに思ってしまった。
 留依についてきてもらって良かった。
 心底思った。
 こんなきらきらした空間、自分だけで入るならためらってしまっただろうから。
「いらっしゃいませ。……あ、留依ちゃん」
 入ってすぐに店員さんが寄ってきた。留依を見て名前を呼んでくる。
「こんにちはー! 今日は友達をお願いします!」
 留依が元気よく言った。美久を示されたので、どきどきしてしまいつつ、ぺこっとおじぎをした。
「そうだったわね。えーと……綾織さん、でしたっけ。本日担当させていただきます、杉山です。どうぞよろしくお願いします」
 美久には初対面なのだ、杉山さんという綺麗なお姉さんは美久に丁寧に挨拶してくれた。
 美久もあわあわと挨拶する。
「綾織 美久ですっ! よ、よろしくお願いします!」
 それで杉山さんによって、髪を切る椅子に連れて行かれた。留依は「付き添ってもいいですか?」と聞いてくれて、どうぞ、と言われていた。
「今日はどうしましょうか? ご予約はカットだけでしたが」
 髪を切るときのてるてる坊主のような布をかぶせられて準備をされたけれど、どうしましょう、と言われても美久は困ってしまった。
 どうオーダーしていいかわからない。
 美容院では「ちょっと先だけ切ってください」としか言わなかったけれど、それではいけないのだろうし。
 助け舟を出してくれたのは留依だった。
「えっと、この写真みたいな感じで……段を入れて欲しいんです」
 留依がスマホを差し出す。それは事前に美久と打ち合わせていたものの写真らしい。