合同体育のレクリエーションは盛り上がった。
全体的には、だが。
美久にとっては面白くなどない。こんなものなら教室で授業を受けているほうがずっと楽しいと思うのだった。
けれどサボる気もない。だから体育館の隅っこでちょこんと座って、自分の番が来るのを待っているのだった。
今日の合同体育は、レクリエーションに近いもの。ほかのクラスとの交流が目的なのかもしれない。
その証拠に、いつもはB組の女子と一緒に女子だけ行うところを、男子が一緒に入っている。
それも、C組とD組の男子が合同なのだ。
ということは、次の機会ではA組とB組の男子、C組とD組の女子が組み合わせてレクリエーションをする、ということになるだろう。
A組男子はクラスメイトなのだからなじみは勿論ある。
B組の男子はそこまででもないけれど。
でも、今一緒に合同を組まされているC、D組の男子はもっと知らない顔ばかりだった。
なにしろ教室が遠い。顔を合わせる機会がないのだ。
ほとんどのひとは知らない顔。何人か、一年生のときに同じクラスだったひとがかろうじてわかるくらいだ。
まぁ、でもプレイは男女別。
A組女子とB組女子の中でシャッフルされた組み合わせでバスケをした。
美久はやはりコートの隅っこをちょろちょろ走っているくらいだったけれど。
ドリブルでボールを運ぶことは出来るし、パスだって外さない。
けれどあまり目立ちたくないのだ。ほかの子たちにとっては遊びに近いのだから、それを邪魔したくない気持ちのほうが強い。
でも留依は別だった。積極的にボールを取りに行くし、ドリブルはすごく速かった。
そんな留依に「パス!」と言ったのはバスケ部の女子。この中では一番うまいだろう。
留依は言われた通りに「ヘイ!」とかけ声を出してボールを投げた。
シュッ、という音が聞こえそうなほど綺麗な軌道を描いたボールはバスケ部の子の手に、ぱしっと収まる。次の瞬間には、その子によってボールはゴールに叩き込まれていた。
ピーッと笛が鳴る。一点ゲット、の笛だ。
「やったぁ!」
見守っていたほかの子たちも喜びの声をあげる。
「渚さんすごいじゃん!」
バスケ部の子が近付いて、留依の肩を叩いた。留依も嬉しそうに、えへへ、と笑う。
「バスケ、やってたことあるの?」
ほかの子も集まってくる。
「ううん、小学校のときクラブで二年ちょっと、やってたくらいだよ」
「それはやってたっていうんだよー」
留依の言葉は謙遜したようなもので、それにほかの子がツッコミを入れて、あはは、と明るい笑いが溢れた。
美久はその中には入らなかったのだけど、すごい、と、ほうっとため息をついていた。
シュートしたバスケ部の子ももちろんすごかった。
でも留依は別にバスケ部でもないし、なんなら転校してきてまだ二週間そこそこ。 それで遠慮することもなく自分からプレイに参加していって、おまけに活躍してしまうのだ。
それをすごい、と思ったのだ。
「おーい、まだ試合終わってないぞー」
今度は違う意味で、ピーッと笛を鳴らされてしまった。コートのそばで審判をしていた桜木先生だ。
「おっとっと」「まずいまずい」なんて言いながら、みんなプレイに戻るべく散っていった。
留依はまたしても、ボールを取りやすいあたりへ向かっていく。
美久はそのままの場所、にいた。
目立ちたくないのはそう。
バスケ部や、あるいは留依のように活躍できる自信がないのも、そう。
でもこれは、ちょっとずるいことなのかもしれない。
うまくなくたって、頑張る姿勢を見せたほうがいいのかもしれない。
美久は思った。
けれどだからといって、いきなりあの中に突っ込んでいくことはできなくて。
プレイの続きも、一度ボールを受け取って、数秒ドリブルをしてパスしただけで終わってしまったくらいだった。
全体的には、だが。
美久にとっては面白くなどない。こんなものなら教室で授業を受けているほうがずっと楽しいと思うのだった。
けれどサボる気もない。だから体育館の隅っこでちょこんと座って、自分の番が来るのを待っているのだった。
今日の合同体育は、レクリエーションに近いもの。ほかのクラスとの交流が目的なのかもしれない。
その証拠に、いつもはB組の女子と一緒に女子だけ行うところを、男子が一緒に入っている。
それも、C組とD組の男子が合同なのだ。
ということは、次の機会ではA組とB組の男子、C組とD組の女子が組み合わせてレクリエーションをする、ということになるだろう。
A組男子はクラスメイトなのだからなじみは勿論ある。
B組の男子はそこまででもないけれど。
でも、今一緒に合同を組まされているC、D組の男子はもっと知らない顔ばかりだった。
なにしろ教室が遠い。顔を合わせる機会がないのだ。
ほとんどのひとは知らない顔。何人か、一年生のときに同じクラスだったひとがかろうじてわかるくらいだ。
まぁ、でもプレイは男女別。
A組女子とB組女子の中でシャッフルされた組み合わせでバスケをした。
美久はやはりコートの隅っこをちょろちょろ走っているくらいだったけれど。
ドリブルでボールを運ぶことは出来るし、パスだって外さない。
けれどあまり目立ちたくないのだ。ほかの子たちにとっては遊びに近いのだから、それを邪魔したくない気持ちのほうが強い。
でも留依は別だった。積極的にボールを取りに行くし、ドリブルはすごく速かった。
そんな留依に「パス!」と言ったのはバスケ部の女子。この中では一番うまいだろう。
留依は言われた通りに「ヘイ!」とかけ声を出してボールを投げた。
シュッ、という音が聞こえそうなほど綺麗な軌道を描いたボールはバスケ部の子の手に、ぱしっと収まる。次の瞬間には、その子によってボールはゴールに叩き込まれていた。
ピーッと笛が鳴る。一点ゲット、の笛だ。
「やったぁ!」
見守っていたほかの子たちも喜びの声をあげる。
「渚さんすごいじゃん!」
バスケ部の子が近付いて、留依の肩を叩いた。留依も嬉しそうに、えへへ、と笑う。
「バスケ、やってたことあるの?」
ほかの子も集まってくる。
「ううん、小学校のときクラブで二年ちょっと、やってたくらいだよ」
「それはやってたっていうんだよー」
留依の言葉は謙遜したようなもので、それにほかの子がツッコミを入れて、あはは、と明るい笑いが溢れた。
美久はその中には入らなかったのだけど、すごい、と、ほうっとため息をついていた。
シュートしたバスケ部の子ももちろんすごかった。
でも留依は別にバスケ部でもないし、なんなら転校してきてまだ二週間そこそこ。 それで遠慮することもなく自分からプレイに参加していって、おまけに活躍してしまうのだ。
それをすごい、と思ったのだ。
「おーい、まだ試合終わってないぞー」
今度は違う意味で、ピーッと笛を鳴らされてしまった。コートのそばで審判をしていた桜木先生だ。
「おっとっと」「まずいまずい」なんて言いながら、みんなプレイに戻るべく散っていった。
留依はまたしても、ボールを取りやすいあたりへ向かっていく。
美久はそのままの場所、にいた。
目立ちたくないのはそう。
バスケ部や、あるいは留依のように活躍できる自信がないのも、そう。
でもこれは、ちょっとずるいことなのかもしれない。
うまくなくたって、頑張る姿勢を見せたほうがいいのかもしれない。
美久は思った。
けれどだからといって、いきなりあの中に突っ込んでいくことはできなくて。
プレイの続きも、一度ボールを受け取って、数秒ドリブルをしてパスしただけで終わってしまったくらいだった。