「おいしいですね。ホットのタピオカっていうのは初めて飲みました」
三十分ほどで順番がきて、タピオカをようやく手にすることができた。
手にしたタピオカはホットのものだった。あつあつで、ほこほこ湯気をあげている。
タピオカといえばコールドドリンク、というイメージがあったので浅葱は驚いたのだけど、蘇芳先輩は「今の最先端はホットタピオカらしいぜ」と得意げに言ってきた。その様子はやはり、どこか無邪気なのだった。
ホットのタピオカミルクティー。
浅葱が以前話した通り、このお店は日本茶のミルクティーを扱っている。
なににしようか迷ったのだけど、浅葱はシンプルに緑茶にしておいた。
ホットの緑茶のミルクティーに、もちもちのタピオカが沈んでいる。
緑茶とお餅を一緒に食べているようで、飲み物というよりスイーツのようだった。
お店の奥に簡単なイートインスペースがあって、小さな椅子とカウンターなんてものだったけれど、あったかなミルクティーがあるのだ。極上の空間だった。
それに隣にいるのが蘇芳先輩なのだから当たり前だろう。なにをしたって、どこにいたって楽しいに決まっている。
「俺もホットは初めてだけど、話によると冷たいのより、タピオカのもちもち感が増すんだってさ。それで今、流行ってるんだと」
「そうなんですね。確かにもちもちしていてお餅みたいです」
何気ない会話をしながらミルクティーを飲める。なんという幸せなのだろうと浅葱は噛みしめてしまった。
蘇芳先輩が飲んでいるのはほうじ茶のミルクティーだった。中身がタピオカなのは同じだけど、色が薄茶なので全く違う飲み物のようだ。
その『全く違う飲み物』。蘇芳先輩がふと浅葱に差し出した。
「一口飲んでみるか?」
……えっ。
浅葱はきょとんとしてしまった。
一口とは。
やがてじわじわその意味が染み込んできて、単純すぎることだが浅葱はまた顔を真っ赤にすることになる。
「えっ……、えっ」
言葉にならないことしか言えない。
そんな、……間接キスになること、なんて。
浅葱がそう思ったことなんてわかっているだろうに、いや、わかっていて言っているに決まっている。蘇芳先輩はやはり楽しそうに笑うのだった。
「いらないか?」
促されて、浅葱は胸の中であわあわしてしまう。
いるに決まっている、決まっているけれど……。
恥ずかしいよ!
胸の中で絶叫したけれどこんなことを現実に言うわけにはいかない。我慢して飲み込んだ。
「い、いりっ、ますっ」
代わりに言った言葉。
ひっくり返ってしまって、また恥ずかしくなった。
こんなあからさまな。
まだ飲んでもいないというのに。
蘇芳先輩はくすくすと笑って「じゃ、一口どうぞ」と差し出してくれる。
その底がまぁるいカップを受け取って、両手で包んで、おそるおそる一口。
緊張しすぎてほうじ茶の味なんてわからなかった。
ただあったかくて、甘くて、それはまるでこの蘇芳先輩と過ごしている時間、そのままのようだったのだ。
三十分ほどで順番がきて、タピオカをようやく手にすることができた。
手にしたタピオカはホットのものだった。あつあつで、ほこほこ湯気をあげている。
タピオカといえばコールドドリンク、というイメージがあったので浅葱は驚いたのだけど、蘇芳先輩は「今の最先端はホットタピオカらしいぜ」と得意げに言ってきた。その様子はやはり、どこか無邪気なのだった。
ホットのタピオカミルクティー。
浅葱が以前話した通り、このお店は日本茶のミルクティーを扱っている。
なににしようか迷ったのだけど、浅葱はシンプルに緑茶にしておいた。
ホットの緑茶のミルクティーに、もちもちのタピオカが沈んでいる。
緑茶とお餅を一緒に食べているようで、飲み物というよりスイーツのようだった。
お店の奥に簡単なイートインスペースがあって、小さな椅子とカウンターなんてものだったけれど、あったかなミルクティーがあるのだ。極上の空間だった。
それに隣にいるのが蘇芳先輩なのだから当たり前だろう。なにをしたって、どこにいたって楽しいに決まっている。
「俺もホットは初めてだけど、話によると冷たいのより、タピオカのもちもち感が増すんだってさ。それで今、流行ってるんだと」
「そうなんですね。確かにもちもちしていてお餅みたいです」
何気ない会話をしながらミルクティーを飲める。なんという幸せなのだろうと浅葱は噛みしめてしまった。
蘇芳先輩が飲んでいるのはほうじ茶のミルクティーだった。中身がタピオカなのは同じだけど、色が薄茶なので全く違う飲み物のようだ。
その『全く違う飲み物』。蘇芳先輩がふと浅葱に差し出した。
「一口飲んでみるか?」
……えっ。
浅葱はきょとんとしてしまった。
一口とは。
やがてじわじわその意味が染み込んできて、単純すぎることだが浅葱はまた顔を真っ赤にすることになる。
「えっ……、えっ」
言葉にならないことしか言えない。
そんな、……間接キスになること、なんて。
浅葱がそう思ったことなんてわかっているだろうに、いや、わかっていて言っているに決まっている。蘇芳先輩はやはり楽しそうに笑うのだった。
「いらないか?」
促されて、浅葱は胸の中であわあわしてしまう。
いるに決まっている、決まっているけれど……。
恥ずかしいよ!
胸の中で絶叫したけれどこんなことを現実に言うわけにはいかない。我慢して飲み込んだ。
「い、いりっ、ますっ」
代わりに言った言葉。
ひっくり返ってしまって、また恥ずかしくなった。
こんなあからさまな。
まだ飲んでもいないというのに。
蘇芳先輩はくすくすと笑って「じゃ、一口どうぞ」と差し出してくれる。
その底がまぁるいカップを受け取って、両手で包んで、おそるおそる一口。
緊張しすぎてほうじ茶の味なんてわからなかった。
ただあったかくて、甘くて、それはまるでこの蘇芳先輩と過ごしている時間、そのままのようだったのだ。