「すみません、待たせちゃいましたか!?」
待ち合わせ場所の駅前。浅葱が駅を出ると既に蘇芳先輩はそこにいた。時計の塔の下。スマホを見ていたようだったけれど浅葱にすぐ気付いてくれて、「こっちだ」と手を振ってくれた。
まさか遅刻だったのだろうか。時間を間違えていたのだろうか。
浅葱は不安になったけれどそれは違ったらしい。
「いや、俺が早く着きすぎたんだよ」
確かに時計を見上げると、浅葱の予定していた通り待ち合わせの午後一時の十分前だった。遅刻どころか少し早めである。
だから蘇芳先輩の言葉は本当だろうけど。
「楽しみで気が逸っちまってな」
そう言った蘇芳先輩はちょっと照れくさそうだった。浅葱にもそれが伝染してしまう。
はにかんだ笑みを浮かべてしまった浅葱。蘇芳先輩も笑った。
照れたようなその笑みはなんだかかわいらしくて。
甘いような、ちょっと酸っぱいような、いちごを噛んだときのような感覚が胸に広がった。
「さ、行こうか」
蘇芳先輩が手を伸ばしてくれた。浅葱の胸にまた甘い気持ちが膨らんで、でも今度はとてもとても嬉しいものだった。
「はい!」
迷うことなく蘇芳先輩の手を取る。今日もしっかりあたたかかった。
蘇芳先輩の手が好きだ、と思う。
自分の手を握って引いてくれるだけではない。
素敵な絵を生み出す、魔法のような手だ。
「どこへ行くんですか?」
歩き出しながら浅葱は尋ねる。蘇芳先輩は行き先が決まっている、という足取りだったので。
年明けのデートは少し遠出をしようということになっていた。
浅葱に聞いてくれた希望。浅葱はどう答えるかちょっと悩んだ。
あまり無理なお願いはしたくない。
でも特別なことはしたい。
よって「おいしいケーキが食べたいです」とお願いした。クリスマスには少し遅いけれどやはりケーキは欠かせないから。
ぼんやりしていたかもしれないけれど、かえってそれが良かったようだ。
「よし、じゃあ気合を入れていい店を探しておくよ」と蘇芳先輩は嬉しそうに笑ってくれたのだから。
このように年明けのデートは浅葱の希望を言った。
なので今日のプチデートは蘇芳先輩にお任せだったのである。
「飲みたいものがあってさ」
蘇芳先輩はふふっと笑った。どこか悪戯っぽい笑みだった。
こういう顔をするとなんだか少年のように見える。浅葱はちょっとおかしいかもしれないことを思ってしまった。年上の男のひとに。
でもそういう顔も蘇芳先輩の一面なのだ。それを知れたことが嬉しいと思う。
「飲みたいもの? カフェですか?」
「んー、カフェといえばカフェかなぁ」
話しながら道を行く。
待ち合わせとデートをする場所に選んだのは、地球堂のある駅だ。
初めてデートのようなことをした想い出の駅。
蘇芳先輩にそこを指定されたとき、浅葱はどきどきしてしまった。
あのときのこと。蘇芳先輩もなにか、ちょっとは特別なことだと思ってくれていたのだろうか。
そしてきっとその通りだった。
蘇芳先輩が「ここだ」と足を止めたところ。
そこは、あのとき前を通り過ぎたタピオカのお店だったのだから。
「ここ、うまいって言ってたろ」
待ち合わせ場所の駅前。浅葱が駅を出ると既に蘇芳先輩はそこにいた。時計の塔の下。スマホを見ていたようだったけれど浅葱にすぐ気付いてくれて、「こっちだ」と手を振ってくれた。
まさか遅刻だったのだろうか。時間を間違えていたのだろうか。
浅葱は不安になったけれどそれは違ったらしい。
「いや、俺が早く着きすぎたんだよ」
確かに時計を見上げると、浅葱の予定していた通り待ち合わせの午後一時の十分前だった。遅刻どころか少し早めである。
だから蘇芳先輩の言葉は本当だろうけど。
「楽しみで気が逸っちまってな」
そう言った蘇芳先輩はちょっと照れくさそうだった。浅葱にもそれが伝染してしまう。
はにかんだ笑みを浮かべてしまった浅葱。蘇芳先輩も笑った。
照れたようなその笑みはなんだかかわいらしくて。
甘いような、ちょっと酸っぱいような、いちごを噛んだときのような感覚が胸に広がった。
「さ、行こうか」
蘇芳先輩が手を伸ばしてくれた。浅葱の胸にまた甘い気持ちが膨らんで、でも今度はとてもとても嬉しいものだった。
「はい!」
迷うことなく蘇芳先輩の手を取る。今日もしっかりあたたかかった。
蘇芳先輩の手が好きだ、と思う。
自分の手を握って引いてくれるだけではない。
素敵な絵を生み出す、魔法のような手だ。
「どこへ行くんですか?」
歩き出しながら浅葱は尋ねる。蘇芳先輩は行き先が決まっている、という足取りだったので。
年明けのデートは少し遠出をしようということになっていた。
浅葱に聞いてくれた希望。浅葱はどう答えるかちょっと悩んだ。
あまり無理なお願いはしたくない。
でも特別なことはしたい。
よって「おいしいケーキが食べたいです」とお願いした。クリスマスには少し遅いけれどやはりケーキは欠かせないから。
ぼんやりしていたかもしれないけれど、かえってそれが良かったようだ。
「よし、じゃあ気合を入れていい店を探しておくよ」と蘇芳先輩は嬉しそうに笑ってくれたのだから。
このように年明けのデートは浅葱の希望を言った。
なので今日のプチデートは蘇芳先輩にお任せだったのである。
「飲みたいものがあってさ」
蘇芳先輩はふふっと笑った。どこか悪戯っぽい笑みだった。
こういう顔をするとなんだか少年のように見える。浅葱はちょっとおかしいかもしれないことを思ってしまった。年上の男のひとに。
でもそういう顔も蘇芳先輩の一面なのだ。それを知れたことが嬉しいと思う。
「飲みたいもの? カフェですか?」
「んー、カフェといえばカフェかなぁ」
話しながら道を行く。
待ち合わせとデートをする場所に選んだのは、地球堂のある駅だ。
初めてデートのようなことをした想い出の駅。
蘇芳先輩にそこを指定されたとき、浅葱はどきどきしてしまった。
あのときのこと。蘇芳先輩もなにか、ちょっとは特別なことだと思ってくれていたのだろうか。
そしてきっとその通りだった。
蘇芳先輩が「ここだ」と足を止めたところ。
そこは、あのとき前を通り過ぎたタピオカのお店だったのだから。
「ここ、うまいって言ってたろ」