浅葱が蘇芳先輩の彼女だから『贔屓』したのではないか。そう誤解されてしまったのかもしれない。
浅葱は焦った。そのような邪なこと。
「おっと、そうか……。余計なことだったな。悪い」
蘇芳先輩はちょっと苦笑いのような笑みを浮かべた。
こういうところは謙虚なのだ。実際に浅葱の言った通りの気持ちで決めてくれたのに。
わざわざこうやって浅葱に知らせてくれるのだ。浅葱の実力で決めてくれたのだ、と。
「来年のことを頼んだぞ。さっきも言ったが六谷なら絶対にできるから」
浅葱は今度しっかりと頷いた。
「先輩の期待を裏切らないように頑張ります」
そんなやりとりで蘇芳先輩と微笑みあう。今のものは恋人としてではなく、現部長と次期二年生リーダーのものだった。
「私、ずっと先輩みたいになりたいって思ってたんです」
浅葱の言葉は、気持ちはするっと出てきた。
こんなことちょっと恥ずかしい。
けれどしっかり伝えておきたい。
「俺みたいに?」
よくわからない、という声を出した蘇芳先輩。やっぱり謙虚だ。あれだけの実力があるのに。
浅葱は改めて、驕らないところも見習いたい、と噛みしめてしまった。
「部長として、先輩として。しっかりみんなを導いてくれる存在。私もなりたいんです」
蘇芳先輩を見上げて、しっかり目を見て言った。ずっと心にあった気持ちを。
蘇芳先輩は驚いたような顔をした。そんなことを言われるとは思わなかった、という顔になる。
けれどその顔はすぐに、ふっと緩んだ。優しい目元が笑みになる。
「俺のことを見てくれてたんだな。俺が六谷を見ていたのと同じか」
言われてちょっと恥ずかしくなった。でもその通りだ。蘇芳先輩が浅葱を見てくれて評価してくれたのと同じだけ。
浅葱だって蘇芳先輩を見てきた。
「俺も同じさ。後輩としてだって六谷はとても優秀だ。一年見てきて強くそう思う」
かぁっと胸が熱くなる。嬉しすぎる言葉だ。
「俺も尊敬するよ。六谷のことを。六谷に恥じないような姿でいたいから」
おまけにそうまで言ってくれる。
尊敬する。
その感情に年令や学年は関係ないのだと思う。
頑張る姿。努力する姿。
それは何才だって変わらないものだし、その姿は優劣なんてない。
だから。
「絶対になってみせます。蘇芳先輩みたいな立派な『先輩』に」
来年度。
蘇芳先輩がもうこの部活や学校にいないのは寂しいけれど、それだけ自分も前に進めるのだ。
蘇芳先輩が認めてくれた、自分の努力や実力。もっと磨いていきたい。
その日の帰り道はどちらかというと、恋人同士というより現部長と次期二年生リーダーの関係だったのかもしれない。
けれどしっかり繋いだ手は恋人同士のもので。
彼女としても、後輩としても認められたことが、浅葱は嬉しくて誇らしくて仕方なくて。
きゅっと蘇芳先輩のあたたかくて大きな手を握り返していた。
浅葱は焦った。そのような邪なこと。
「おっと、そうか……。余計なことだったな。悪い」
蘇芳先輩はちょっと苦笑いのような笑みを浮かべた。
こういうところは謙虚なのだ。実際に浅葱の言った通りの気持ちで決めてくれたのに。
わざわざこうやって浅葱に知らせてくれるのだ。浅葱の実力で決めてくれたのだ、と。
「来年のことを頼んだぞ。さっきも言ったが六谷なら絶対にできるから」
浅葱は今度しっかりと頷いた。
「先輩の期待を裏切らないように頑張ります」
そんなやりとりで蘇芳先輩と微笑みあう。今のものは恋人としてではなく、現部長と次期二年生リーダーのものだった。
「私、ずっと先輩みたいになりたいって思ってたんです」
浅葱の言葉は、気持ちはするっと出てきた。
こんなことちょっと恥ずかしい。
けれどしっかり伝えておきたい。
「俺みたいに?」
よくわからない、という声を出した蘇芳先輩。やっぱり謙虚だ。あれだけの実力があるのに。
浅葱は改めて、驕らないところも見習いたい、と噛みしめてしまった。
「部長として、先輩として。しっかりみんなを導いてくれる存在。私もなりたいんです」
蘇芳先輩を見上げて、しっかり目を見て言った。ずっと心にあった気持ちを。
蘇芳先輩は驚いたような顔をした。そんなことを言われるとは思わなかった、という顔になる。
けれどその顔はすぐに、ふっと緩んだ。優しい目元が笑みになる。
「俺のことを見てくれてたんだな。俺が六谷を見ていたのと同じか」
言われてちょっと恥ずかしくなった。でもその通りだ。蘇芳先輩が浅葱を見てくれて評価してくれたのと同じだけ。
浅葱だって蘇芳先輩を見てきた。
「俺も同じさ。後輩としてだって六谷はとても優秀だ。一年見てきて強くそう思う」
かぁっと胸が熱くなる。嬉しすぎる言葉だ。
「俺も尊敬するよ。六谷のことを。六谷に恥じないような姿でいたいから」
おまけにそうまで言ってくれる。
尊敬する。
その感情に年令や学年は関係ないのだと思う。
頑張る姿。努力する姿。
それは何才だって変わらないものだし、その姿は優劣なんてない。
だから。
「絶対になってみせます。蘇芳先輩みたいな立派な『先輩』に」
来年度。
蘇芳先輩がもうこの部活や学校にいないのは寂しいけれど、それだけ自分も前に進めるのだ。
蘇芳先輩が認めてくれた、自分の努力や実力。もっと磨いていきたい。
その日の帰り道はどちらかというと、恋人同士というより現部長と次期二年生リーダーの関係だったのかもしれない。
けれどしっかり繋いだ手は恋人同士のもので。
彼女としても、後輩としても認められたことが、浅葱は嬉しくて誇らしくて仕方なくて。
きゅっと蘇芳先輩のあたたかくて大きな手を握り返していた。