ごく、と唾を飲んだ直後だった。蘇芳先輩が浅葱を見た。浅葱は当たり前のように教壇の蘇芳先輩を見ていたのでしっかりと目が合った。
え、まさか。
どくんっと心臓が高鳴った。痛いくらいに反応する。
ふっと目元を緩めて蘇芳先輩は口を開く。
「六谷 浅葱。お前に任せる」
期待はしていた。
なりたいと思っていた。
けれど現実になるのは全く意味が違う。
一瞬、ぼうっとしてしまった。さっきの金澤先輩のように堂々と立ちあがることもできずに。
でもすぐにはっとした。
夢が叶った。
あたふたと立ち上がる。がたがた椅子が鳴ってしまった。そのくらい動揺してしまったのだ。
「お前ならきっといいリーダーになれる。新二年生と、新しく入学してくる一年生の指導役になってくれ」
優しい目元で言ってくれた蘇芳先輩。もう一度、どくっと心臓が跳ねてしまった。そのままどきどき熱い鼓動を刻む。
「は、はいっ! わ、私にできるかわかりませんが、精一杯やらせていただきます!」
浅葱の返事はひっくり返った。おじぎをするのも一呼吸遅れてしまったくらいだ。
慌ててぺこりとおじぎをする。金澤先輩のように、まず蘇芳先輩に。それから美術室の中の部員たちに。
「大丈夫さ」
迎えてくれたのは蘇芳先輩の優しさに溢れた笑みと言葉。それから部員のあたたかな拍手だった。
「さて、役職発表は以上。次は来年度の話を少ししようかな」
蘇芳先輩の話題を切り替える言葉に、ちょっとざわついていた部内はまた静かになった。
とすっと椅子に元通り腰かけても浅葱の心臓の速さはおさまらなかった。どきどきするのがとまらない。
これは蘇芳先輩に対して抱いている恋の気持ちとは違う意味の嬉しさと、また誇らしさだった。
二年生リーダーになれるのだ。
蘇芳先輩直々に任命してくれたのだ。
それはつまり、蘇芳先輩が浅葱なら二年生リーダーにふさわしいと思ってくれたことであって、それは今の浅葱にとって最上級の評価であって、そして光栄だった。
頑張らないと。蘇芳先輩のような立派なリーダーになれるように、頑張らないと。
浅葱は胸元をぎゅっと握った。熱い鼓動を刻む胸を、だ。
すぐに気持ちを切り替えたけれど。
きちんと蘇芳先輩の話を聞かなければ。来年度の話。しっかり聞いて、覚えて、来年になったら……いや、違う。
年が明けて実際に世代交代になったら、少しでもうまくできるように実行するのだ。
え、まさか。
どくんっと心臓が高鳴った。痛いくらいに反応する。
ふっと目元を緩めて蘇芳先輩は口を開く。
「六谷 浅葱。お前に任せる」
期待はしていた。
なりたいと思っていた。
けれど現実になるのは全く意味が違う。
一瞬、ぼうっとしてしまった。さっきの金澤先輩のように堂々と立ちあがることもできずに。
でもすぐにはっとした。
夢が叶った。
あたふたと立ち上がる。がたがた椅子が鳴ってしまった。そのくらい動揺してしまったのだ。
「お前ならきっといいリーダーになれる。新二年生と、新しく入学してくる一年生の指導役になってくれ」
優しい目元で言ってくれた蘇芳先輩。もう一度、どくっと心臓が跳ねてしまった。そのままどきどき熱い鼓動を刻む。
「は、はいっ! わ、私にできるかわかりませんが、精一杯やらせていただきます!」
浅葱の返事はひっくり返った。おじぎをするのも一呼吸遅れてしまったくらいだ。
慌ててぺこりとおじぎをする。金澤先輩のように、まず蘇芳先輩に。それから美術室の中の部員たちに。
「大丈夫さ」
迎えてくれたのは蘇芳先輩の優しさに溢れた笑みと言葉。それから部員のあたたかな拍手だった。
「さて、役職発表は以上。次は来年度の話を少ししようかな」
蘇芳先輩の話題を切り替える言葉に、ちょっとざわついていた部内はまた静かになった。
とすっと椅子に元通り腰かけても浅葱の心臓の速さはおさまらなかった。どきどきするのがとまらない。
これは蘇芳先輩に対して抱いている恋の気持ちとは違う意味の嬉しさと、また誇らしさだった。
二年生リーダーになれるのだ。
蘇芳先輩直々に任命してくれたのだ。
それはつまり、蘇芳先輩が浅葱なら二年生リーダーにふさわしいと思ってくれたことであって、それは今の浅葱にとって最上級の評価であって、そして光栄だった。
頑張らないと。蘇芳先輩のような立派なリーダーになれるように、頑張らないと。
浅葱は胸元をぎゅっと握った。熱い鼓動を刻む胸を、だ。
すぐに気持ちを切り替えたけれど。
きちんと蘇芳先輩の話を聞かなければ。来年度の話。しっかり聞いて、覚えて、来年になったら……いや、違う。
年が明けて実際に世代交代になったら、少しでもうまくできるように実行するのだ。