浅葱がこの学校と美術部に入ってそろそろ半年になる。
 この美術部がある重色(かさね)高校は、そこそこ偏差値の高い私立高校だ。
 とはいえ高級な学校ではない。通っているのは普通の家の子たちがほとんど。浅葱だって家は庶民の庶民。お父さんは会社員でお母さんはパート、中学生の弟がいて……なんて普通すぎる家だ。
 公立高校も周りにはあるけれど、単に偏差値がちょうど良くて家からも近くて、ついでに友達も「カサネにしようかな」と言っていた子も何人かいた。そのくらいで決めてしまったのだ。
 高級な学校で学費がかかる、などではないのでお父さんやお母さんも「私立ならしっかり勉強もできそうだしいいだろう」とあっさり許可を出してくれた。受験もあっさり通った。
 そこから重色高校での生活がはじまったわけである。
 春に初めて制服を着たときはとても嬉しかった。私立高校らしくかわいい制服だったから。
 紺色のブレザー。スカートとリボンの色は学年ごと違う。
 浅葱の入学した年は三年生が青。二年生が赤。一年生が緑だった。
 よって浅葱のスカートとリボンは緑。
 スカートは緑をメインにしたチェック柄。丈はあまり短くすると注意されるのでそこそこに。
 リボンは無地の緑で、ブラウスの襟の下でぱちんと留めるタイプだ。
 そんなかわいい服で毎日学校に通えるなんて。
 中学は公立で割と地味なセーラー服だったので、世界が変わるようにも感じてしまった。