一階まで降りて購買へ向かった。
 購買は学校内の小さなコンビニのようなお店だが、活動がある部活が多いので休日でもやっている。
 スタッフのおばちゃんは一人だったけれど。普段、お昼休みなどはパンを買う生徒で溢れるのでスタッフのおばちゃんも何人かいるのだけど今、静かなのは部活の生徒しかいないからだろう。
 休日の購買を利用するのは滅多にないので、浅葱はちょっと新鮮な気持ちになった。
 そこで棚から大好きなミルクティーのペットボトルを取り上げたのだけど。

『六谷、結構根を詰めてただろう。少しでも息抜きになれば、と思って』

 ふと数日前のことを思い出した。蘇芳先輩に言ってもらった言葉だ。
 そう言って綺麗なライトアップを見せてくれた蘇芳先輩。それは浅葱が楽しんでいても、ちょっと無理をしつつあった、と思ったからだろう。
 今、手に取ったのは大きいサイズのペットボトルで、あのときのものとは違う。
 けれどあの甘かったミルクティーの味と、優しいあたたかさがまざまざとよみがえった。
 私が、今できること。
 浅葱はふっと思った。
 なにもできないわけじゃない。
 手伝うことなんてできない。一年生の自分が手を出すなんてそんなことは図々しい。
 だけど。
 ……なにもできないわけじゃない。
 もう一度そう思って、浅葱はミルクティーのペットボトルを持ったままお店の奥へと進んだ。
 『それ』を、どれにしようかと考えながら。