「森屋の言う通りだ。部員としての義務を果たさなかったこと。それはお前たちが悪いことだと、わかるな?」
 はい。はい。と二人はそれぞれ、ただ頷いた。
 先輩に取り囲まれて責められたせいで、二人とも既に泣き出しそうな顔になっていた。
 けれど庇うことなどできるはずがない。副部長の言ったことはなにも間違っていないのだから。
 二人に話をする役は蘇芳先輩にチェンジされたようだ。
 副部長の森屋先輩と、その横にいた三年生も一歩引く。
「だけどこれ以上、説教を続けてもこうなっちまったもんは仕方ない」
 蘇芳先輩の言ったことは部長として当然のことだった。ただ怒るのではなくこれからのことを見すえた話だ。
「とはいえ、出さないのは許さない。部員として全員提出は言ってあったからな」
 蘇芳先輩のきっぱりとした言葉に萌江たち二人は黙った。
 『中途半端』でも出せということだろうか。
 二人だけでなく、その場の部員全員がそう思っただろう。
 けれど蘇芳先輩の言ったことは違っていた。
「森屋が言っただろう。『折り合いをつけることは必要だ』って。そうしてみろ。間に合わないなら間に合わないなりに、なんとか格好のつくように努力してみろ。満足できるできにはならないだろう。けれど、それが秋季賞に向かってきた部員としてすべきことだ」
 しん、と部室の中が静まり返る。
 蘇芳先輩の言ったことは正論で、それから『部長』だった。先輩である以上に、この部活を引っ張っていく『部長』なのだ。
 きっぱり言い切った蘇芳先輩の言葉。
 萌江たち二人もやるべきことは言いつけられたけれど、それはやらなければいけないことなのである。蘇芳先輩の言った通り。
 それは、この部活に居続けるというなら避けては通れない。
「わかりました」
「すみません」
 萌江たち二人はそう言って蘇芳先輩の言葉を受け入れた。
 これでこの騒動は一旦終了、ということになっただろう。
 蘇芳先輩は二人から視線を外して美術室の中を見渡した。息を呑んで見守っていたほかの部員を、だ。
 そして空気を変えるように、ぱん、と手をひとつ叩いた。
「はい、この話はおしまいだ。時間がないぞ、みんな自分の作業に入ろう」