「じゃあ、登録したらいいんですよね」
浅葱は自分のスマホを取り出した。先輩の教えてくれたサイトにアクセスする。
「ああ。別に特別な情報がいるわけじゃないからすぐできるよ」
ここから登録画面に進む、とか、メールアドレスと名前と、あと生年月日が必要……などと指差して教えてくれた。
ただ、浅葱が個人情報を入力するところは見ないでいてくれた。そういう気遣いもしてくれるのだ。じんわり胸が熱くなった。
そして無事に登録も済んだ。これであの絵の具が安く買える。それにほかにも絵の具や用具もたくさんあった。ゆっくり見てみたい。それでいいものがあったら一緒に……。
浅葱がそう思ったのはわかっている、とばかりに蘇芳先輩はまた微笑んだ。
「予算の都合や欲しいものもあるだろうし。家に帰ってゆっくり見て決めるといいよ」
また気を回してもらってしまった。胸は熱くなるばかりだった。
「はい! ありがとうございます!」
「いいや。お役に立てたなら良かった」
スマホでサイトを見ているうちにフラペチーノはほとんどなくなっていた。
溶けてしまうのだから早めに飲まなくてはいけないものだとはいえ、なくなりそうになっているのはちょっと寂しい。
それに、フラペチーノがなくなったということはそろそろ帰らねばだろう。外も陽が暮れてきている。まだ暗いとまではいかないけれど、外はオレンジ色の気配になっていた。
「いつのまにか秋になってたんだなぁ」
ずず、と残り少ないフラペチーノを飲みながら蘇芳先輩が言った。
「ほんとですね。ついこの間夏休みだった気がするのに」
窓の外では多くのひとが行き交っていた。繫華街の外れなのだ。それなりにひとも多い。
今日は平日だからまだ少ないほうだろうけど、夕方なのでこれから帰宅するとか、もしくは仕事や学校が終わったから遊んだり買い物をして帰ろう、とか。そういうひとたちだろう。
もしくは自分たちのように放課後に遊びに来ている学生、とか。
思って、またこの状況を噛みしめてしまった。
今日は素敵な日だった、と思う。
まるでデートの体験。
恋人同士なんかじゃない。
けれど後輩としてだって自分のことを少しでも良く思ってくれているから、今日のことをしてくれたのだろうし、それだけでとても嬉しい。
「そろそろ帰るか。こんな時間まで付き合わせて悪かったな」
蘇芳先輩も窓の外を眺めていたけれど、ふとこちらを見て言った。その言葉はどこまでも優しくて。浅葱は首を振っていた。
「いいえ。付き合っていただいたのは私です。たくさんお世話になってしまって……」
その返事には、またにこっと笑われた。
「六谷は律儀だなぁ。真面目だし……あ、でも俺の話、つまらなくなかったか? 部活じゃないのにあれこれ……」
ちょっと表情が変わって、蘇芳先輩は先程の話について心配になった、という口調になる。
そんなこと、とんでもない。浅葱はもう一度首を振ることになる。
律儀で真面目なのは蘇芳先輩のほうだろう。
絵に対する気持ちもそうだし、後輩を大事にしてくれるのもそうだし。憧れの先輩だ。片想いをしている意味以外でも尊敬している。
「そんなことありません! 先輩の話を聞いているの、とても楽しいんです。新しいことをどんどん知っていけて……」
感じた気持ちはぽろっと出てきていた。素直に口から零れたのだ。
「私も先輩みたいになりたいです」
浅葱は自分のスマホを取り出した。先輩の教えてくれたサイトにアクセスする。
「ああ。別に特別な情報がいるわけじゃないからすぐできるよ」
ここから登録画面に進む、とか、メールアドレスと名前と、あと生年月日が必要……などと指差して教えてくれた。
ただ、浅葱が個人情報を入力するところは見ないでいてくれた。そういう気遣いもしてくれるのだ。じんわり胸が熱くなった。
そして無事に登録も済んだ。これであの絵の具が安く買える。それにほかにも絵の具や用具もたくさんあった。ゆっくり見てみたい。それでいいものがあったら一緒に……。
浅葱がそう思ったのはわかっている、とばかりに蘇芳先輩はまた微笑んだ。
「予算の都合や欲しいものもあるだろうし。家に帰ってゆっくり見て決めるといいよ」
また気を回してもらってしまった。胸は熱くなるばかりだった。
「はい! ありがとうございます!」
「いいや。お役に立てたなら良かった」
スマホでサイトを見ているうちにフラペチーノはほとんどなくなっていた。
溶けてしまうのだから早めに飲まなくてはいけないものだとはいえ、なくなりそうになっているのはちょっと寂しい。
それに、フラペチーノがなくなったということはそろそろ帰らねばだろう。外も陽が暮れてきている。まだ暗いとまではいかないけれど、外はオレンジ色の気配になっていた。
「いつのまにか秋になってたんだなぁ」
ずず、と残り少ないフラペチーノを飲みながら蘇芳先輩が言った。
「ほんとですね。ついこの間夏休みだった気がするのに」
窓の外では多くのひとが行き交っていた。繫華街の外れなのだ。それなりにひとも多い。
今日は平日だからまだ少ないほうだろうけど、夕方なのでこれから帰宅するとか、もしくは仕事や学校が終わったから遊んだり買い物をして帰ろう、とか。そういうひとたちだろう。
もしくは自分たちのように放課後に遊びに来ている学生、とか。
思って、またこの状況を噛みしめてしまった。
今日は素敵な日だった、と思う。
まるでデートの体験。
恋人同士なんかじゃない。
けれど後輩としてだって自分のことを少しでも良く思ってくれているから、今日のことをしてくれたのだろうし、それだけでとても嬉しい。
「そろそろ帰るか。こんな時間まで付き合わせて悪かったな」
蘇芳先輩も窓の外を眺めていたけれど、ふとこちらを見て言った。その言葉はどこまでも優しくて。浅葱は首を振っていた。
「いいえ。付き合っていただいたのは私です。たくさんお世話になってしまって……」
その返事には、またにこっと笑われた。
「六谷は律儀だなぁ。真面目だし……あ、でも俺の話、つまらなくなかったか? 部活じゃないのにあれこれ……」
ちょっと表情が変わって、蘇芳先輩は先程の話について心配になった、という口調になる。
そんなこと、とんでもない。浅葱はもう一度首を振ることになる。
律儀で真面目なのは蘇芳先輩のほうだろう。
絵に対する気持ちもそうだし、後輩を大事にしてくれるのもそうだし。憧れの先輩だ。片想いをしている意味以外でも尊敬している。
「そんなことありません! 先輩の話を聞いているの、とても楽しいんです。新しいことをどんどん知っていけて……」
感じた気持ちはぽろっと出てきていた。素直に口から零れたのだ。
「私も先輩みたいになりたいです」