えっ、同じのが飲めるの?
 そんなのすごい、もっとデートみたい。
 そう思った浅葱だったけれど。
 先輩は空いていたレジにつかつかと向かって「さつまいもフラペチーノをふたつ、お願いします」と注文してしまった。
 浅葱はきょとんとしてしまい、すぐにかぁっと頬が熱くなるのを感じた。
 一緒に注文してもらってしまった。同じメニューを、ふたつ。デート感は増すばかり。
 もしかして、レジのお姉さんとかに「デートなのね」とか思われたりして。
 そんな妄想までしてしまって心の中でぶんぶんと首を振った。
 それは図々しすぎる。
 図々しすぎる、けれど。
 まるでなくは、ないんじゃないかなぁ。
 なにしろ高校生の男子と女子が一緒にいるのだ。そう見えたっておかしくはないだろう。
 胸を熱くしながら「あちらでお待ちください」と言われて待機カウンターへ向かった蘇芳先輩を追いかけた。肩にかけていたバッグからお財布を取り出す。
「すみません、注文お任せしてしまって……650円ですよね」
 お財布を開けて、小銭を摘まもうとしたのだけど「ああ、いい、いい」と手を振られてしまってまた驚いた。
「俺が誘ったんだから、奢るよ」
 またきょとんとしてしまった。
 奢るとは。
 いや、意味がわからないわけはないけれど。
 そしてその意味はすぐに飲み込めて慌ててしまう。
「え!? えっ、いえいえ、そんな、悪いです!」
 そう言ったのに蘇芳先輩は笑顔のまま。
「いいって。実は夏休みに短期バイトをしたんだよ。それが結構収入になったから」
 それでさっさと先輩は「さつまいもフラペチーノ、おふたつ。お待たせしましたー」と店員さんが差し出してくれたカップをふたつ持って、おまけに「さ、あっちで飲もう」と促してきた。
 あわあわしつつも、ここで無理やりお金を押し付けるのも失礼になる。
 え、え、いいのかな。こんな、誘ってもらっただけでもありがたいのに、奢ってくれるなんて。
 これは夢ではないだろうか。
 浅葱には最早そんなふうにしか思えなかった。
 先輩をそのまま追いかけて「ここでいいかな」と勧められた、窓際のカウンタ席につくしかなかったのである。
 男の子に飲み物を奢ってもらったなんて、初めて、だった。