「ここ。なにかついてるぞ」
「え!?」
それは単に『ついてる』と教えてくれただけだったのだ。
かっと顔が熱くなる。たったそれだけのことに手を握られるのかなんて思ってしまった自分が恥ずかしい。
けれど触れてくれたのは事実。
だから、そう、思ってしまっても、ヘンでは。
頭の中にぐるぐる思考が回った。
その中でやっと蘇芳先輩が触れて示してくれたところを見ると、そこにはなにかピンク色がくっついていた。
なにこれ。今日は絵なんて描いてないのに。
「チョークかな。ざらざらしてたから」
蘇芳先輩は流石だ。見て、一瞬触れただけでなんであるかわかったらしい。
言われれば浅葱もすぐ思い至った。その通り、チョークだ。
「あ……。帰る前に、黒板が消してなかったですから消して……多分そのときに……」
日直が忘れたのか、サボったのか。午後の授業で先生が色々書いた黒板がそのままだった。
もう、仕方ないなぁ。消しとかないと明日困るのに。
思った浅葱は、ちょっとの手間はかかるけれどすぐ終わる、とサッと消して教室を出たのだった。
そのあと特にトイレなどには行かなかったから、つまり手を洗う機会もなかったからくっついたままだったのだろう。
「そうなのか。消し忘れられてたのかな」
「そうなんです。日直の子、忘れちゃったのかな……」
そう言ったところで蘇芳先輩はまた微笑んだ。今度は目を細めるような笑顔だった。
「それでわざわざ消してきたのか? 当番でもないのに?」
「え、……はい。明日、困ると思って……」
何気なく言ったのに。
「六谷は優しいんだな。放って帰ることもできただろうに」
先輩の声は優しかった。
褒められた……?
じわじわ胸に染み入ってきて今度は違う意味で熱くなる。
嬉しかった。
自分のそんな何気ない行動を。
「あ、……ありがとう……ございます」
くすぐったかったけれど嬉しくて。浅葱のお礼を言う言葉も明るくなった。
今日はなんていい日だろう。
こんな、街中なんて場所で偶然出会っただけではない。自分の何気ないことを褒めてくれた。認めてくれた。
今日は幸せな気持ちで眠れそう。
思った浅葱だったけれど、今日はそれ以上のラッキーが降ってきたのである。
「え!?」
それは単に『ついてる』と教えてくれただけだったのだ。
かっと顔が熱くなる。たったそれだけのことに手を握られるのかなんて思ってしまった自分が恥ずかしい。
けれど触れてくれたのは事実。
だから、そう、思ってしまっても、ヘンでは。
頭の中にぐるぐる思考が回った。
その中でやっと蘇芳先輩が触れて示してくれたところを見ると、そこにはなにかピンク色がくっついていた。
なにこれ。今日は絵なんて描いてないのに。
「チョークかな。ざらざらしてたから」
蘇芳先輩は流石だ。見て、一瞬触れただけでなんであるかわかったらしい。
言われれば浅葱もすぐ思い至った。その通り、チョークだ。
「あ……。帰る前に、黒板が消してなかったですから消して……多分そのときに……」
日直が忘れたのか、サボったのか。午後の授業で先生が色々書いた黒板がそのままだった。
もう、仕方ないなぁ。消しとかないと明日困るのに。
思った浅葱は、ちょっとの手間はかかるけれどすぐ終わる、とサッと消して教室を出たのだった。
そのあと特にトイレなどには行かなかったから、つまり手を洗う機会もなかったからくっついたままだったのだろう。
「そうなのか。消し忘れられてたのかな」
「そうなんです。日直の子、忘れちゃったのかな……」
そう言ったところで蘇芳先輩はまた微笑んだ。今度は目を細めるような笑顔だった。
「それでわざわざ消してきたのか? 当番でもないのに?」
「え、……はい。明日、困ると思って……」
何気なく言ったのに。
「六谷は優しいんだな。放って帰ることもできただろうに」
先輩の声は優しかった。
褒められた……?
じわじわ胸に染み入ってきて今度は違う意味で熱くなる。
嬉しかった。
自分のそんな何気ない行動を。
「あ、……ありがとう……ございます」
くすぐったかったけれど嬉しくて。浅葱のお礼を言う言葉も明るくなった。
今日はなんていい日だろう。
こんな、街中なんて場所で偶然出会っただけではない。自分の何気ないことを褒めてくれた。認めてくれた。
今日は幸せな気持ちで眠れそう。
思った浅葱だったけれど、今日はそれ以上のラッキーが降ってきたのである。