「うまくいったぞ。自信がある。勿論実際に合格発表があるまで安心できないけどな」
 壱樹先輩の言葉にも「良かったです!」と心から言うことができた。
 受験をひとまずやり遂げた壱樹先輩。浅葱の尊敬する部分が痛いほど伝わってきた。
 部活だけではない。勉強だってこつこつ積み上げてきたからこれほど自信のあることが言えるのだ。
 それは部長を引退してからいきなり猛勉強をしたわけではないに決まっている。そんな付け焼き刃で多真美術大学に合格できるものか。
 自分もここに通いたい。
 ずっと思っていたことを浅葱は噛みしめた。
 実際に会場の大学まで来たことでもっと強く思ったのだ。
 二年後、今度は自分が大学受験をすることになる。
 そのとき今の壱樹先輩のように「自信がある」と言い切れるくらいに勉強をしなくては。
 部活だって手を抜くつもりはない。なにしろ壱樹先輩が二年生リーダーに任命してくれたのだ。全力で頑張るつもりだ。
 でも将来のため。壱樹先輩と同じ学校に通いたい。
 それからランクの高い多真美術大学に入ってもっと専門的に美術を学びたい。
 両方の気持ちがいっぱいにあった。
「合格発表があったらデートしような」
「はい! お祝いさせてください!」
 優しい笑みを浮かべてくれた壱樹先輩。
 デートができる。
 そして壱樹先輩のお祝いができる。
 二重に嬉しかった。
「まだ受かると決まったわけじゃないけどな」
「自信があるって言ったのは壱樹先輩じゃないですか」
 浅葱の言葉に二人は顔を見合わせた。同時に笑ってしまう。
 その通りだけど二人とも確信していたのだ。
 きっとうまくいく、と。