浅葱の意識が、一瞬、空白になった。
 取れた。
 頭の中にそれだけ浮かんだ。
 空白になったのは、どんな賞であるのかわからなかったからだ。
 よくある、大賞、とか、佳作、とか、優秀賞、とかではない。
 審査員特別賞、とは。
 部員のみんなも賞の種類がよくわからないようで、戸惑った空気が漂った。
 水野先生はそれを予想していたように説明してくれる。
「審査員の方が特別な印象を受けられた、と評価してくれた賞ですね。ちょっと異色かもしれません。どちらかというと『今後に大いに期待している』というものと取っていいものかな」
 ぽうっとしたままの浅葱に、じわじわとその説明は染み込んでいった。
 それが胸の奥まで染み入ったとき。
 かっと胸の奥で爆発した。
 かぁっと顔に熱がのぼる。きっと真っ赤になっただろう。
 これはさっきの壱樹先輩と同様。嬉しさや興奮から、だ。
 水野先生の説明を飲み込んだのは浅葱だけではない。すぐに美術室内に拍手が溢れた。
 そうだ、お礼を言わないと。
 浅葱はあたふた立ち上がる。
「あっ、あっ、ありがとうっ、ございます!」
 お礼を言う声は思いっきりひっくり返った。けれどそれを恥ずかしいと思う余裕もなければ、実際に恥ずかしいとも思わなかった。
 だって立派過ぎるだろう。
 賞のひとつに入った。
 おまけに今後に期待している、とまで評価してもらえた。
 嬉しくないはずがない。
 これで発表は全てだった。賞に入ったひとは手放しで喜んでいたし、そうでないひとたちは賞賛の声や拍手を送ってくれていた。
「入賞したひとは、今度の朝集会で表彰される予定です。その打ち合わせがあるので、今日は少しだけ残ってくださいね」
 水野先生がそんな言葉で締めた。
 今日はまともに作業などできるものか。それで解散となった。
「六谷! やったな!」