その日も部活に部員全員が集められた。もうほとんど部活に来ることのない三年生も全員だ。
 そりゃあそうだろう。
 頑張ってきたコンテスト、秋季賞。結果なんて一番早く知りたいに決まっている。
「みんな、集まったわね」
 美術準備室から水野先生が一枚の紙を持って出てきたとき、浅葱は喉から心臓が飛び出すかと思った。
 今まではそわそわしていた程度だったのに一気に息苦しくなってくる。
「気になっているでしょうからすぐ発表しましょう。結論から言うとかなりいい結果だったわ。重色高校として誇らしい結果です」
 前置きのあと、真っ先に呼ばれたのは壱樹先輩の名前だった。
「蘇芳くん。準大賞に選ばれました」
 ざわっと部室に大きなざわめきが溢れる。
 準大賞。
 全国ではないが多くの高校からの応募があるコンテストで準大賞、なんて。
 浅葱の心臓がもっと強く打った。
 壱樹先輩なら賞に入ると確信していた。
 しかし実際に結果を発表されてしまえば落ちついてなどいられない。まるで自分のことのように感動を覚えてしまう。
 すぐに壱樹先輩のほうを見てしまった。それは浅葱だけではなかっただろうけど。
 美術部の視線、すべてが壱樹先輩に集まる。その中で壱樹先輩はついていた机から立ち上がった。
 浅葱の初めて見るような表情を浮かべて、だ。
 顔を真っ赤にしていた。
 それは照れではない。
 嬉しさと、感動と、それから興奮からだろう。
「ありがとうございます!!」
 口から出た言葉も明るくて、このとき壱樹先輩は『前部長』ではなく絵画を頑張る一人の男のひとだった。
「おめでとう!」
「おめでとうございます!」
 部員たちから口々にお祝いの言葉がかけられる。浅葱も勿論だ。大きな拍手も弾けた。
「最後に素晴らしい結果を出せて良かったわね。部長としての集大成だわ」
「はい! 頑張った甲斐がありました!」
 心底興奮している、という様子の壱樹先輩。
 はぁ、とため息をつくのが見えた。それは感嘆のため息。いい意味でのため息だ。。