部活休みの日があるのは、部活以外の学校生活や私生活を充実させなさい、という意図らしい。それも大事だけど少々不満。
 でも無視することはできないし、これも片想いからの気持ちではあるのだけどルールを破る女の子になりたくもなかった。
 だから仕方がない。そういう日は早く学校を出て友達との寄り道なんかをして遊ぶのだった。それはそれで楽しいのでいいことだと思う。気分転換にもなる。よって今日はそういう水曜日だったのだけど。
「ごめーん、今日は家の用事があるんだよ」
「私も……別の学校の子と久しぶりに会おうって約束してて……」
 何故か友達たちに軒並み予定があった。それもいつも遊ぶメンバー全員にである。
 こういうことは珍しいけれどたまには起こるだろう。仕方がない。浅葱は「残念だけど楽しんできてよ」と友達たちと別れたのだった。
 一人で帰ろうかと思ったのだけど、学校を出て駅まで歩いているうちにふと思った。
 折角時間があるのだ。そのまま帰ってもいいけれど普段はできないことができる。なら活用したほうがいい。
 なにかしようか、どこかへ寄っていこうか。
 思ったときすぐ浮かんだ場所があった。
 ああ、あそこへ行ってみよう。
 思いついて浅葱はちょっと微笑んでしまった。
 普段学校帰りには行けない。少し遠いのだ。だから休みの日しか行けないところ。一人で自由に見られるし、行くのもいいだろう。
 よって浅葱は駅に着いてから、普段帰るのとは逆側のホームへ行った。つまり逆方向へ向かう電車に乗った。
 そのときから既に楽しい気持ちでいっぱいだった。
 浅葱にとって好きな場所へ行くのだ。それはもう楽しくなって当たり前の場所へ。