先輩、とはまさか。
浅葱がここまでずっと気にしてしまっていた、曽我先輩というひとではないだろうか?
そしてそれは残念ながら事実だったようなのだ。
「俺の前の部長さんがさ、女子先輩だったんだけど。絵がめちゃくちゃうまいひとで、当時の賞を総ナメするようなひとで」
初めて壱樹先輩の口から聞く。浅葱の心臓がどきどきしてきた。
けれどこのどきどきはあまり心地良くなかった。
本当は聞きたくない。でも聞いておかなければいけないことだとも思う。ここまで気にしてしまってきたのは確かなのだから。
「そう、なんですね」
こんなあまり綺麗でない気持ちは悟られたくないけど。よって浅葱はなるべく普通に言った。
「先輩も今、美大で活躍してるはずだ。だから俺も大学生になったら余計に頑張らないとなと思うんだ」
まぁ、まず受かることだけどな。なんて壱樹先輩は頭に手をやって笑った。
浅葱も笑った。
けれどそれは愛想笑いのようになってしまっただろう。
曽我先輩は美大にいるのだ。
まさか壱樹先輩が受けるのと同じところだろうか。
いや、この口ぶりだとそうなのかもしれない。
胸がずきずき痛む。
曽我先輩というひとと付き合ってなんかいないことは知っている。だって自分と付き合ってくれているのだから。
でも再会して、近くにいるようになったら?
まさか、なにか、嫌なことが。
思ってしまって浅葱は自分が嫌になった。
そんな疑うようなこと。
考えたって意味がないし、壱樹先輩を信じていないようなことなのに。
だから頭から振り払おうとした。
「私もそろそろ受験について考えないとって思うんですよ」
言ったことは話をそらすようなことだった。本筋からはそれていないけれど。
壱樹先輩はなにも疑問に思わなかったらしい。「そうだな、二年生になったらそろそろ考えたほうがいいだろう」と言って、そのあとは壱樹先輩が二年生の頃、勉強していたことなんかを話してくれた。それで浅葱の意識もそちらへ集中することができた。
でもさっき考えてしまったことは、どうしても頭の隅には残ってしまったけれど。
浅葱がここまでずっと気にしてしまっていた、曽我先輩というひとではないだろうか?
そしてそれは残念ながら事実だったようなのだ。
「俺の前の部長さんがさ、女子先輩だったんだけど。絵がめちゃくちゃうまいひとで、当時の賞を総ナメするようなひとで」
初めて壱樹先輩の口から聞く。浅葱の心臓がどきどきしてきた。
けれどこのどきどきはあまり心地良くなかった。
本当は聞きたくない。でも聞いておかなければいけないことだとも思う。ここまで気にしてしまってきたのは確かなのだから。
「そう、なんですね」
こんなあまり綺麗でない気持ちは悟られたくないけど。よって浅葱はなるべく普通に言った。
「先輩も今、美大で活躍してるはずだ。だから俺も大学生になったら余計に頑張らないとなと思うんだ」
まぁ、まず受かることだけどな。なんて壱樹先輩は頭に手をやって笑った。
浅葱も笑った。
けれどそれは愛想笑いのようになってしまっただろう。
曽我先輩は美大にいるのだ。
まさか壱樹先輩が受けるのと同じところだろうか。
いや、この口ぶりだとそうなのかもしれない。
胸がずきずき痛む。
曽我先輩というひとと付き合ってなんかいないことは知っている。だって自分と付き合ってくれているのだから。
でも再会して、近くにいるようになったら?
まさか、なにか、嫌なことが。
思ってしまって浅葱は自分が嫌になった。
そんな疑うようなこと。
考えたって意味がないし、壱樹先輩を信じていないようなことなのに。
だから頭から振り払おうとした。
「私もそろそろ受験について考えないとって思うんですよ」
言ったことは話をそらすようなことだった。本筋からはそれていないけれど。
壱樹先輩はなにも疑問に思わなかったらしい。「そうだな、二年生になったらそろそろ考えたほうがいいだろう」と言って、そのあとは壱樹先輩が二年生の頃、勉強していたことなんかを話してくれた。それで浅葱の意識もそちらへ集中することができた。
でもさっき考えてしまったことは、どうしても頭の隅には残ってしまったけれど。