その日の放課後は部活がなかった。
 本当なら毎日部活へ行って絵を描いていたい。賞に出す絵は毎日描くわけではないが全体部活のデッサン会は週に一回必ずあるし、週に四日は部活がある。
 基本的な技術をあげる活動も浅葱は好きだった。やはり積み重ねなのであるし、蘇芳先輩からの指導を受けられることもあるのだから。
 部長である蘇芳先輩は当たり前のように高い技術を持っている。そのために自分で練習する以外にも浅葱たち後輩の指導役にもなってくれる。
 「ここはガイドラインを入れたほうがいい」ときっちりとパースを合わせて描くための線をどこに入れたらいいか教えてくれたり。
 「もう少し明るい色を入れてみたらいいんじゃないかな。そのほうが光の位置がはっきりする」と全体のバランスを教えてくれたり。
 浅葱にとって実になることばかりだった。
 おまけにこういうときは当たり前のように近くで作品を覗き込んで教えてくれる。距離が近い。それはどきどきしてしまうことで。
 単純すぎると思うけれど、そういうことも起こるので全体部活の日も楽しくて嬉しいものだった。
 でも今日は活動がない。週に一回、水曜日だが学校全体で『部活休みの日』と決められてしまっていた。浅葱としては不満なこと。