いくつか落書きをして加工も入れて、プリクラは綺麗に完成した。スマホにも転送して大きな画面で見ることもできるようにした。
「この機種、綺麗だなー。画質がいい」
 蘇芳先輩がいかにも美術部らしいことを言うので、浅葱はちょっと笑ってしまった。
「女子向けの機種のほうがやっぱりいい機種なんだな。男は損だよ」
 その言葉は浅葱をもっと、くすくすと笑わせてくるのだった。
「でもこれからは六谷と入れるもんな」
 小さく笑っていた浅葱だったけれど、その笑いは蘇芳先輩によって止められた。
 そうだ。
 プリクラコーナーは男子入場OKエリア以外、女子専用なのだ。
 例外は『女子の同伴がいる男性』。カップルや家族などに限られているのだ。
 つまりそれは、蘇芳先輩は浅葱にとって特別な『カップルの男性』であるわけで。
 もうよく知っていたことなのに、こうやって形にされると、なんだかくすぐったくなってしまって浅葱はもじもじしてしまった。
「また撮ってくれよな」
 そんな約束をした、プリクラ。


 プリクラの中でも最後に撮ったもの。
 蘇芳先輩にハグされているものだ。
 写真の中の浅葱は顔を真っ赤にして固まって写っていた。
 随分情けなく恥ずかしい姿である。
 けれど、そんな浅葱をうしろからハグする蘇芳先輩は笑っていたのだ。
 それも幸せそうに、だ。
 だからいい、のだと思う。
 一緒のプリクラ、つまり写真に写ることだって、そしてハグだって、これから少しずつ慣れていけばいいのではないだろうか。
 浅葱はプリクラの中の自分にちょっと苦笑しながらも決意した。
 もっともっと、距離が近付いていけますように。
 いつかは蘇芳先輩の腕の中で自分も幸せそうに笑えたらいい、と。確かに思った。