最後には最上階でプリクラを撮った。
 思えば蘇芳先輩とツーショットなど初めてだった。
 友達とは何度も撮っているのに、そのせいで随分緊張してしまった。操作のボタンも押し間違えてしまう始末だ。
 蘇芳先輩は「俺は男友達と撮れるヤツしかやったことないからこの機種はわからないんだよ。任せる」と言っていたのに。
 さっきのシューティングゲームで蘇芳先輩の教えてくれたのは完璧だったのに。
 あたふたしてしまう自分を浅葱はちょっと情けなく思ってしまった。
 けれど撮るの自体はとても楽しくて。
 プリクラはあわただしい。背景などの設定を変えて次々に写真が撮られる。
 あわただしさには慣れているし蘇芳先輩も『男友達と撮ったことがある』と言っていただけあってそれほど戸惑う様子もなかった。
 撮影はスムーズに進んだのだけど。
 最後のほう。
 機械が喋った内容に浅葱はどきっとしてしまった。

『最後は仲良しのポーズだよ~! ぎゅってハグしてみよ!』

 ハグ!?
 一瞬、息が止まったかもしれない。
 いや、プリクラとしては定番だけど。
 友達同士でなら良くやるけど。
 でも今、一緒にいるのは蘇芳先輩なわけで。
 かぁーっと頭の中が熱くなる。きっと顔が赤くなっただろう。
 そんな浅葱の状況も気持ちもわかっているだろうに、蘇芳先輩はしれっと浅葱の腕に触れてきた。
「ほら、早くしないと撮られちまうぞ」
 そう言って。
 ぐいっと腕を引かれて、あっと思ったときには蘇芳先輩の腕の中に捕まえられていた。