その日、浅葱(あさぎ)が描いていたのは青い絵だった。
 青だけ、の絵だ。青だけで絵になるかなんて言われそうだけど、なるのである。
 青い絵の具を数種類。それだけでなく、青い絵の具、そこへ白と黒の絵の具を足す。混ぜる。そうしてグレーがかっていたり、あるいはパステルがかっていたりする『青』を表現する。
 水色。
 マカロンブルー。
 スモーキーブルー。
 紺色。
 藍色。
 ディープブルー……。
 『青』の表現なんて日本語から英語までたくさんありすぎて、すべてなんて到底知らない。
 けれど名前がわからなくてもいい。好みの色になればいいのだ。
 構図を決めたあとは色を決めていく。その過程が一番楽しいのだった。