そして、朝は来る。そして、晴天。
「結局、停電、直んなかったねー」
目の下の隈を、メイクで誤魔化しながら、シオンは 二人に言った。
昨日の『寝ずの番』を
停電で過ごした シオン達は、結局そのままダルマストーブとカイロだけで、なんとか 暖をとる事が出来た。
けれども、春先に湖東を襲った、記録的大雪は、各所の電線に、湿り雪を乗せ、複数ヵ所を断線させたらしい。
国道を始め、雪による車両の走行が 難しいことも含めて、電力復旧が、大幅に遅れていると、出勤してきた、式場管理者が 説明してくれた。
「この度、雪による事情で、暖房が使用出来できず、ご不便御掛けしました。」
その式場の管理者は、今、 女性スタッフと共に、喪主である レンのところへ、いの一番に、声をかけに来ていた。
シオン達も、事務所のカイロを 非常時とはいえ、無断で使用したわけで。レンが、
「こればかりは、仕方ありませんし、カイロの代金も 支払いますね。」
と、極上の 笑顔を、張り付けて、面倒を無しにした。
この シオンから見れば、わざとらしい笑顔も、 見るのは最後だろうと 思う。
もともと、告別式を行わない、直葬の予定だ。
火葬場の1番時間に、間に合うように、雪も考慮して出発をする事になった。
レンが、シオンとルイに、予定の説明をする。
シオンは、昨日借りた『故人の喪服』を今日も、借りて着ていた。
葬儀には、都心部を離れた分だけ、独自の風習が 地域に 多少は、あるものだ。
この 式場は、地域性から、 出棺を 正面玄関からしないと 説明されシオンは、驚いた。
広いリビング式になっている 式場に、出窓があり、そこから お棺を運び出すようになっているのだ。
「すごいね、『古き良き』で、しかも、合理化!」
シオンは、思わず感嘆の声を上げたが、ルイも、
「棺桶運ぶのも、男手じゃあねーんだな。ふつうに台車だなあ。」
と、驚いていた。
少子化がすすめば、葬儀参加の数も少なくなるのからだな、と 変に二人で感心した。
出窓から霊柩車に棺が乗せられる。
それを 見守る、二人のところへ、レンが来る。
「シオンも、ルイも、もう式場には戻ってこないから、荷物全部、持っていくよ?」
レンが 昨日から、祭壇に飾っていた『若い叔母の遺影額』を、体の 正面に抱えながら、二人に促した。
「火葬してる間に、1回戻ってくるんじゃないのー?」
シオンは 意外そうに、レンに聞く。
「焼くのは、1時間半しか、かからないみたいだよ?向こうで 待てるみたいだからね。」
そして、チラッと腕の時計に目を流して、
「シオンは、ルイの車に乗せて貰って来てくれる? 俺は、霊柩車の助手席に、 額持って、乗るから。」
シオンに伝えて、託すように、ルイを見た。女性スタッフが、恥かみながら、レンに声を掛にくる。
霊柩車の助手席に、遺影を持った 『氷の貴公子』が乗ると、
『パアアアーーーーーン』
と、クラクションが 高く鳴らされた。
それを合図に、シオンとルイの二人が、合掌する中、
霊柩車は その体を黒光させて、 雪景色に消えた。
「結局、停電、直んなかったねー」
目の下の隈を、メイクで誤魔化しながら、シオンは 二人に言った。
昨日の『寝ずの番』を
停電で過ごした シオン達は、結局そのままダルマストーブとカイロだけで、なんとか 暖をとる事が出来た。
けれども、春先に湖東を襲った、記録的大雪は、各所の電線に、湿り雪を乗せ、複数ヵ所を断線させたらしい。
国道を始め、雪による車両の走行が 難しいことも含めて、電力復旧が、大幅に遅れていると、出勤してきた、式場管理者が 説明してくれた。
「この度、雪による事情で、暖房が使用出来できず、ご不便御掛けしました。」
その式場の管理者は、今、 女性スタッフと共に、喪主である レンのところへ、いの一番に、声をかけに来ていた。
シオン達も、事務所のカイロを 非常時とはいえ、無断で使用したわけで。レンが、
「こればかりは、仕方ありませんし、カイロの代金も 支払いますね。」
と、極上の 笑顔を、張り付けて、面倒を無しにした。
この シオンから見れば、わざとらしい笑顔も、 見るのは最後だろうと 思う。
もともと、告別式を行わない、直葬の予定だ。
火葬場の1番時間に、間に合うように、雪も考慮して出発をする事になった。
レンが、シオンとルイに、予定の説明をする。
シオンは、昨日借りた『故人の喪服』を今日も、借りて着ていた。
葬儀には、都心部を離れた分だけ、独自の風習が 地域に 多少は、あるものだ。
この 式場は、地域性から、 出棺を 正面玄関からしないと 説明されシオンは、驚いた。
広いリビング式になっている 式場に、出窓があり、そこから お棺を運び出すようになっているのだ。
「すごいね、『古き良き』で、しかも、合理化!」
シオンは、思わず感嘆の声を上げたが、ルイも、
「棺桶運ぶのも、男手じゃあねーんだな。ふつうに台車だなあ。」
と、驚いていた。
少子化がすすめば、葬儀参加の数も少なくなるのからだな、と 変に二人で感心した。
出窓から霊柩車に棺が乗せられる。
それを 見守る、二人のところへ、レンが来る。
「シオンも、ルイも、もう式場には戻ってこないから、荷物全部、持っていくよ?」
レンが 昨日から、祭壇に飾っていた『若い叔母の遺影額』を、体の 正面に抱えながら、二人に促した。
「火葬してる間に、1回戻ってくるんじゃないのー?」
シオンは 意外そうに、レンに聞く。
「焼くのは、1時間半しか、かからないみたいだよ?向こうで 待てるみたいだからね。」
そして、チラッと腕の時計に目を流して、
「シオンは、ルイの車に乗せて貰って来てくれる? 俺は、霊柩車の助手席に、 額持って、乗るから。」
シオンに伝えて、託すように、ルイを見た。女性スタッフが、恥かみながら、レンに声を掛にくる。
霊柩車の助手席に、遺影を持った 『氷の貴公子』が乗ると、
『パアアアーーーーーン』
と、クラクションが 高く鳴らされた。
それを合図に、シオンとルイの二人が、合掌する中、
霊柩車は その体を黒光させて、 雪景色に消えた。