ダルマストーブの火に掛けていた鍋が すぐ沸騰してきた。ポットからのお湯なのだから、当然だ。
鍋から 立ち上る、ユルリとした湯気を見て、ルイが
「なあ 今、鍋に、燗入れ れたら、上手い酒、飲めるよなあ。」
と、物欲しそうに ダルマストーブを見て呟いた。
棚に グラスはあったけども、徳利は ないし、清酒も、ない。シオンも、さすがに 地酒は持ち合わせてない。
「停電の雪の夜。だしね。」
レンも、ダルマストーブを見ながら 呟く。
シオンは 思い出した様に、笑って、
「ははっ。寒いから、熱燗…。ご先祖さま達に、これこれ、ソナタらは、安直だねーって 笑われるかもねー。」
二人と同じように、ダルマストーブを見ながら 揶揄した。そして、
「『夜寒焼』って、寒い夜。今みたいなイメージでしょ? でも、茶道なんかで、『夜寒焼』ってね、敢えて 夏に使うのが粋だって言うんだよ。字面を 眺めるだけでも、『いと涼し』、ってねー。」
シオンは、三角に 立てた、自分の膝に 顔を乗せて、悪戯気味に笑った。
「なんだ!それ、すげーな。」
ダルマストーブから、シオンに目を向けて、ルイが 驚く。
「でしょ? 『酔雪楼』でだされる、料理 1つ1つに、句なんかを読むような 人達だよ。それこそ、煮物に、『一面に、湯気立つ池や、霜の朝』とか言うんだよー。おんなじ、湯気みても、ルイの熱燗とは、大違いー。」
シオンに つられて、レンも クスッと 笑うと、ルイは 明らかにムクれた。
そんなルイを 眺めつつ、
「そうだよね、『酔雪焼』とか、『夜寒焼』とかを焼き物の名前にするぐらいの人達だからね。」
子どもの頃のような 微笑みをレンがした。
「うん。窯のある所が、焼き物の名前になるんだから、そこまで考えて、選んだ土地だろうねー。なんていうか、『モノが持つ力』みたいなものを、熟知してるって 仕掛ける人だったんだなって思うよ、ご先祖さま達は」
レンを見ながら、シオンは応えた。
「シオンが、お祖父様の金庫で見つけた、焼き物は、そんな焼き物だったんだ?」
ダルマストーブの火を また目を向けながら、続けて レンは聞く。
それに、シオンは、金庫を 思い描きながら語る。
「両方の焼き、あった。二つは、極端に個性が 違う、銘々皿。そんなに大きな 皿じゃない。なのに、どっちも 一目で、心が惹かれる。あんな お皿、初めてだった。」
そう、レンとルイみたいな 存在。
「『モノが持つ力』か。そりゃまるで、オーラみたいな、もんか。それか、縁みたいな、もんなのか。」
ルイの目にも、ダルマストーブの火が燃えているのが見える。
「おんなじ様な事を 三菱総帥が言ってたかも。『天下の名器を 私如きが使うべきでない』」
片手を頬に当てて、シオンは虚ろげに呟くのに、レンは 、聞いてきた。
「それ、なんの器なんだろ、、?」
「、、さっき、レンの手の中で、言った、『天目茶碗』だよ。」
シオンが、内心で小波が立つのを、押し隠して、口をニッと上げた。
レンは、少し 間を開けて、片手を口に当てて、目を見開く。
何が、レンの頭に浮かんだだろうか。
本当に、 どこまでも、自分達は、一族の血を惹いている。そう、シオンが 思う瞬間だった。
ルイも、胡座の膝に置いてる、手を組んでいる。
ルイの心にも、なにが動いたのだろう。
三人、暫し、黙。
鍋から 立ち上る、ユルリとした湯気を見て、ルイが
「なあ 今、鍋に、燗入れ れたら、上手い酒、飲めるよなあ。」
と、物欲しそうに ダルマストーブを見て呟いた。
棚に グラスはあったけども、徳利は ないし、清酒も、ない。シオンも、さすがに 地酒は持ち合わせてない。
「停電の雪の夜。だしね。」
レンも、ダルマストーブを見ながら 呟く。
シオンは 思い出した様に、笑って、
「ははっ。寒いから、熱燗…。ご先祖さま達に、これこれ、ソナタらは、安直だねーって 笑われるかもねー。」
二人と同じように、ダルマストーブを見ながら 揶揄した。そして、
「『夜寒焼』って、寒い夜。今みたいなイメージでしょ? でも、茶道なんかで、『夜寒焼』ってね、敢えて 夏に使うのが粋だって言うんだよ。字面を 眺めるだけでも、『いと涼し』、ってねー。」
シオンは、三角に 立てた、自分の膝に 顔を乗せて、悪戯気味に笑った。
「なんだ!それ、すげーな。」
ダルマストーブから、シオンに目を向けて、ルイが 驚く。
「でしょ? 『酔雪楼』でだされる、料理 1つ1つに、句なんかを読むような 人達だよ。それこそ、煮物に、『一面に、湯気立つ池や、霜の朝』とか言うんだよー。おんなじ、湯気みても、ルイの熱燗とは、大違いー。」
シオンに つられて、レンも クスッと 笑うと、ルイは 明らかにムクれた。
そんなルイを 眺めつつ、
「そうだよね、『酔雪焼』とか、『夜寒焼』とかを焼き物の名前にするぐらいの人達だからね。」
子どもの頃のような 微笑みをレンがした。
「うん。窯のある所が、焼き物の名前になるんだから、そこまで考えて、選んだ土地だろうねー。なんていうか、『モノが持つ力』みたいなものを、熟知してるって 仕掛ける人だったんだなって思うよ、ご先祖さま達は」
レンを見ながら、シオンは応えた。
「シオンが、お祖父様の金庫で見つけた、焼き物は、そんな焼き物だったんだ?」
ダルマストーブの火を また目を向けながら、続けて レンは聞く。
それに、シオンは、金庫を 思い描きながら語る。
「両方の焼き、あった。二つは、極端に個性が 違う、銘々皿。そんなに大きな 皿じゃない。なのに、どっちも 一目で、心が惹かれる。あんな お皿、初めてだった。」
そう、レンとルイみたいな 存在。
「『モノが持つ力』か。そりゃまるで、オーラみたいな、もんか。それか、縁みたいな、もんなのか。」
ルイの目にも、ダルマストーブの火が燃えているのが見える。
「おんなじ様な事を 三菱総帥が言ってたかも。『天下の名器を 私如きが使うべきでない』」
片手を頬に当てて、シオンは虚ろげに呟くのに、レンは 、聞いてきた。
「それ、なんの器なんだろ、、?」
「、、さっき、レンの手の中で、言った、『天目茶碗』だよ。」
シオンが、内心で小波が立つのを、押し隠して、口をニッと上げた。
レンは、少し 間を開けて、片手を口に当てて、目を見開く。
何が、レンの頭に浮かんだだろうか。
本当に、 どこまでも、自分達は、一族の血を惹いている。そう、シオンが 思う瞬間だった。
ルイも、胡座の膝に置いてる、手を組んでいる。
ルイの心にも、なにが動いたのだろう。
三人、暫し、黙。