「おうどん、温かいうちに 食べちゃおうか?、お腹すいちゃったし。」
そう言って シオンは 黒盆から、 うどんと稲荷寿司を ダイニングテーブルに並べる。
「頂きます。」
添えられた割り箸を割って、うどんを すすると、思わず顔が綻んだ。
レンとルイも、シオンと 同じようにして食べはじめるが、やはり 部屋の空気は 軽く無い。
それでも、稲荷寿司に 箸をつけ始めたシオンは、それを眺め 思い出したことを、口にする。
「ねぇ、叔母さんが作る おにぎりって、覚えてる?」
二人が聞いているかは、気にせず シオンは 懐かしい情景を 頭に描く。確か おにぎりは、、
「「俵型。」」
同時に 返事が返された。
良かった。レンとルイの視線が ちゃんと合わさった。と、シオン確認して、続ける。
「あたしね、俵型のおにぎりって、叔母さんが作ってくれるのが初めてだったんだー。て、いうか、俵型のおにぎりを 作る人って回りには叔母さんだけだったな。」
すると レンが 稲荷寿司を箸に持ちながら、
「絶対、お袋のおにぎりは、俵型しかなかったよね。」
と、嬉しそうに言う。
「あのね、お祖父様のいた地域は、俵型なんだって。東は三角、西は丸が多いんだけど。ほら、お祖父様って、歌舞伎とか見に行くとね、『姫寿司』って、舞妓さんが食べるような小さな お寿司をお土産にくれたんだ。」
シオンは、記憶の引き出しを もう少し 突っ込んで 探し始める。
「それで、小さいお寿司は 口を開けないで食べれるように。俵に握るのは、食べやすくて、すぐ食べれるようって、お祖父様に教えてもらった。商人の知恵なんだろうね。それでね、叔母さんの おにぎりが 俵型なのが 子どもながら 妙に納得できたんだよねー。」
何故か ふふっと、シオンは 笑いが自然と出た。
あれは、
夏の日差しと 水中の世界。
思い出して意識的すると、
急に、シオンの回りが かつての時間に 世界が変わる。
そうだ毎年、
夏休みに何回も愛知川に叔母夫婦は、シオン達を連れてくれた。
叔母の出してくれる、大きな紙弁当には 沢山の俵型おにぎり。
手に持ちやすいように、海苔もしっかり巻かれた、真っ白なおにぎり。
中には 焼いたサクラマスのほぐし身が入って、それが 美味しそうなピンクなのだ。
叔父は春に 琵琶湖で釣ったサクラマスを 冷蔵庫にいつも冷凍していて、叔母が大事に使う。
夏は、夏でマスは脂がのる。
なのに、わざわざ 桜のマスだと言って、シオンに冷凍したサクラマスを叔母が見せてくれるのだ。
この辺りで言う、サケはビワコマス。春だけ サクラマスと呼ぶと、叔父は笑って教えてくれた。
キラキラとした川で しこたま 遊んで、
岸に上がると、叔母の俵おにぎりの紙弁当が出てくる。
そしたら、レンとルイが川遊びの間でとれた魚を、持って岸に現れる。
叔父の網の魚と、合わせて 焼いて食べるのだ。
五感いっぱいに感じた、夏のご馳走は、シオンの記憶に鮮明。
ただ、ただ、少女で幸せな瞬間。
『俵おにぎり。それと、タクワン。』
シオンの隣で ルイの台詞がする。
葬儀場のダイニングテーブルに、シオンの意識が ついっともどる。
「そう、お袋の俵型おにぎりは、中にシャケで、タクワンが添えてたね。あれが、泳いで疲れてると、凄く上手いんだよ。ルイは タクワン全部食べるんだよ。懐かしいなあ、ルイ。」
レンが、ルイに 言葉をかけた。
そうか、タクワンの覚えがないのは、ルイのせいか。
そう聞いて、シオンは ニマッと口を弓なりにして、 パンっと手を叩いた。
「タクワンじゃないけど、漬け物、あるよ!!」
そう言って シオンは 黒盆から、 うどんと稲荷寿司を ダイニングテーブルに並べる。
「頂きます。」
添えられた割り箸を割って、うどんを すすると、思わず顔が綻んだ。
レンとルイも、シオンと 同じようにして食べはじめるが、やはり 部屋の空気は 軽く無い。
それでも、稲荷寿司に 箸をつけ始めたシオンは、それを眺め 思い出したことを、口にする。
「ねぇ、叔母さんが作る おにぎりって、覚えてる?」
二人が聞いているかは、気にせず シオンは 懐かしい情景を 頭に描く。確か おにぎりは、、
「「俵型。」」
同時に 返事が返された。
良かった。レンとルイの視線が ちゃんと合わさった。と、シオン確認して、続ける。
「あたしね、俵型のおにぎりって、叔母さんが作ってくれるのが初めてだったんだー。て、いうか、俵型のおにぎりを 作る人って回りには叔母さんだけだったな。」
すると レンが 稲荷寿司を箸に持ちながら、
「絶対、お袋のおにぎりは、俵型しかなかったよね。」
と、嬉しそうに言う。
「あのね、お祖父様のいた地域は、俵型なんだって。東は三角、西は丸が多いんだけど。ほら、お祖父様って、歌舞伎とか見に行くとね、『姫寿司』って、舞妓さんが食べるような小さな お寿司をお土産にくれたんだ。」
シオンは、記憶の引き出しを もう少し 突っ込んで 探し始める。
「それで、小さいお寿司は 口を開けないで食べれるように。俵に握るのは、食べやすくて、すぐ食べれるようって、お祖父様に教えてもらった。商人の知恵なんだろうね。それでね、叔母さんの おにぎりが 俵型なのが 子どもながら 妙に納得できたんだよねー。」
何故か ふふっと、シオンは 笑いが自然と出た。
あれは、
夏の日差しと 水中の世界。
思い出して意識的すると、
急に、シオンの回りが かつての時間に 世界が変わる。
そうだ毎年、
夏休みに何回も愛知川に叔母夫婦は、シオン達を連れてくれた。
叔母の出してくれる、大きな紙弁当には 沢山の俵型おにぎり。
手に持ちやすいように、海苔もしっかり巻かれた、真っ白なおにぎり。
中には 焼いたサクラマスのほぐし身が入って、それが 美味しそうなピンクなのだ。
叔父は春に 琵琶湖で釣ったサクラマスを 冷蔵庫にいつも冷凍していて、叔母が大事に使う。
夏は、夏でマスは脂がのる。
なのに、わざわざ 桜のマスだと言って、シオンに冷凍したサクラマスを叔母が見せてくれるのだ。
この辺りで言う、サケはビワコマス。春だけ サクラマスと呼ぶと、叔父は笑って教えてくれた。
キラキラとした川で しこたま 遊んで、
岸に上がると、叔母の俵おにぎりの紙弁当が出てくる。
そしたら、レンとルイが川遊びの間でとれた魚を、持って岸に現れる。
叔父の網の魚と、合わせて 焼いて食べるのだ。
五感いっぱいに感じた、夏のご馳走は、シオンの記憶に鮮明。
ただ、ただ、少女で幸せな瞬間。
『俵おにぎり。それと、タクワン。』
シオンの隣で ルイの台詞がする。
葬儀場のダイニングテーブルに、シオンの意識が ついっともどる。
「そう、お袋の俵型おにぎりは、中にシャケで、タクワンが添えてたね。あれが、泳いで疲れてると、凄く上手いんだよ。ルイは タクワン全部食べるんだよ。懐かしいなあ、ルイ。」
レンが、ルイに 言葉をかけた。
そうか、タクワンの覚えがないのは、ルイのせいか。
そう聞いて、シオンは ニマッと口を弓なりにして、 パンっと手を叩いた。
「タクワンじゃないけど、漬け物、あるよ!!」