「ごめん。レン。」
そういいながら、シオンが自分の眉を 思っ切り 寄せてしまった理由は、2つだった。
1つは、レンが 全くといっていいほど 叔母に会っても、電話もしてなかった事への 非難と、
もう1つは、レンの言葉で わかった自分の姿への嫌悪から。
「あたし、叔父さんの お葬式、出てないね。レンの事、言えない。」
そんなシオンに、レンは静かに頷いただけだ。きっと、シオンが参列していない理由も 解っている。
「あたしも ちゃんとお別れしたかったよ。でも、ママが許してくれなかった。」
「シオンの叔母さん、来てくれてたよ。」
そうだよね。母親は、自分だけ参列すると言った。シオンは、あの日、本当に 母親と揉めたのだ。
子どもの頃、娘のように 可愛いがってくれた 叔父。レンやルイも 待っているから、自分も葬儀に参列したいと シオンも母親に懇願した。
けれども、その頃にはすでに 滋賀の叔母夫婦とは 関係が悪くなった母親は、あの花火の夏休み以降、決して シオンが滋賀へ行くことを 許さなかった。
「ママだけ、お式に出るだけに するって。きっと、叔父さんのお葬式、 会社の人とかで 人数も多いから、お焼香するぐらいでしょって。」
叔母とケンカしてから 時間が立つのに、あの時も まだ怒っていた母親は、プリプリしながら車に乗っていったっけ。シオンは、今更ながら 叔母家族に 申し訳ない気持ちになる。
そんなシオンの頭を、レンは ポンポンと軽く叩いた。
「レンね、子ども扱い?どうかと思うから、やめてよね。」
うん?という格好だけして レンが 口を弓なりにしたので、すっかり忘れていた事を、シオンは口にした。
「あたし、まだ叔母さんに挨拶してない。いいかな?」
『グー』
式場の自動扉が開く気配がして、人が入ってくる。
レンは、チラッとだけ 自動扉側の人を確認しながら、シオンに伝えた。
「あのさ シオン、お袋 、家で亡くなってたんだ。それで…わからなくて、1週間 そのまま だった。」
え、
祭壇予定の下にある 棺に歩んでいたシオンは、レンを見た。
「目と、鼻の あたりしか 出てないから。それでも、声かけてやってくれると うれしいよ。」
そう、レンはシオンに 何とも言えない表情で 儚く微笑んだ。
「税理士さんが来たから、ちょっと席、外すね。」
と、さっき入ってきた 男性に向かって ひらり立ち上がる。
税理士さんと レンが言っていた男性とレンは、リビングの端にあるドアの向こうへ入って行いった。
そのドアの向こうには、葬儀事務所のロビーがあるのだろう。
事務スタッフの女性も、あのドアから出入りをしていたから。
シオンは、改めて祭壇位置の写真を見上げた。知っている笑顔の叔母が、そこにある。
その笑顔は、良く知る顔だから、写真は 最近の叔母のものではないはずだ。
今どきは、急に亡くなった故人の写真を探すのも 簡単な様で 難しいらしい。電話の中に 本人の顔写真があるのは 珍しく、電話自体ロックも多いと どこかで聞いたことがある。
みると、花はまだない。
棺の窓を開けてみる。
そこには、レンが言ったとおり、目鼻 のあたりだけが出て、あとは ガーゼに埋もれていた。
何度、目を凝らしても、目の前の叔母の目鼻立ちは、記憶にないものだった。
写真と比べても、ちょっと違う。かな。
「……、叔母さん、…来ましたよぉ。シオンですぅ。聞こえるぅ…?」
顔もとに、シオンは 声を寄せてみた。
そういいながら、シオンが自分の眉を 思っ切り 寄せてしまった理由は、2つだった。
1つは、レンが 全くといっていいほど 叔母に会っても、電話もしてなかった事への 非難と、
もう1つは、レンの言葉で わかった自分の姿への嫌悪から。
「あたし、叔父さんの お葬式、出てないね。レンの事、言えない。」
そんなシオンに、レンは静かに頷いただけだ。きっと、シオンが参列していない理由も 解っている。
「あたしも ちゃんとお別れしたかったよ。でも、ママが許してくれなかった。」
「シオンの叔母さん、来てくれてたよ。」
そうだよね。母親は、自分だけ参列すると言った。シオンは、あの日、本当に 母親と揉めたのだ。
子どもの頃、娘のように 可愛いがってくれた 叔父。レンやルイも 待っているから、自分も葬儀に参列したいと シオンも母親に懇願した。
けれども、その頃にはすでに 滋賀の叔母夫婦とは 関係が悪くなった母親は、あの花火の夏休み以降、決して シオンが滋賀へ行くことを 許さなかった。
「ママだけ、お式に出るだけに するって。きっと、叔父さんのお葬式、 会社の人とかで 人数も多いから、お焼香するぐらいでしょって。」
叔母とケンカしてから 時間が立つのに、あの時も まだ怒っていた母親は、プリプリしながら車に乗っていったっけ。シオンは、今更ながら 叔母家族に 申し訳ない気持ちになる。
そんなシオンの頭を、レンは ポンポンと軽く叩いた。
「レンね、子ども扱い?どうかと思うから、やめてよね。」
うん?という格好だけして レンが 口を弓なりにしたので、すっかり忘れていた事を、シオンは口にした。
「あたし、まだ叔母さんに挨拶してない。いいかな?」
『グー』
式場の自動扉が開く気配がして、人が入ってくる。
レンは、チラッとだけ 自動扉側の人を確認しながら、シオンに伝えた。
「あのさ シオン、お袋 、家で亡くなってたんだ。それで…わからなくて、1週間 そのまま だった。」
え、
祭壇予定の下にある 棺に歩んでいたシオンは、レンを見た。
「目と、鼻の あたりしか 出てないから。それでも、声かけてやってくれると うれしいよ。」
そう、レンはシオンに 何とも言えない表情で 儚く微笑んだ。
「税理士さんが来たから、ちょっと席、外すね。」
と、さっき入ってきた 男性に向かって ひらり立ち上がる。
税理士さんと レンが言っていた男性とレンは、リビングの端にあるドアの向こうへ入って行いった。
そのドアの向こうには、葬儀事務所のロビーがあるのだろう。
事務スタッフの女性も、あのドアから出入りをしていたから。
シオンは、改めて祭壇位置の写真を見上げた。知っている笑顔の叔母が、そこにある。
その笑顔は、良く知る顔だから、写真は 最近の叔母のものではないはずだ。
今どきは、急に亡くなった故人の写真を探すのも 簡単な様で 難しいらしい。電話の中に 本人の顔写真があるのは 珍しく、電話自体ロックも多いと どこかで聞いたことがある。
みると、花はまだない。
棺の窓を開けてみる。
そこには、レンが言ったとおり、目鼻 のあたりだけが出て、あとは ガーゼに埋もれていた。
何度、目を凝らしても、目の前の叔母の目鼻立ちは、記憶にないものだった。
写真と比べても、ちょっと違う。かな。
「……、叔母さん、…来ましたよぉ。シオンですぅ。聞こえるぅ…?」
顔もとに、シオンは 声を寄せてみた。